夫が亡くなってから12日後、私は隣人の女性が、リンゴの木から取った果物をぎっしり詰めた袋を2つ抱えて、私たちのフェンスを乗り越えているところを見つけた。
最初は、ただ果物を盗んでいるだけだと思った。
ところが彼女は、27年前に起きたある出来事について口にした。
それは、夫と私だけが知っているはずのことだった。
その瞬間、リンゴのことなど、この物語の中ではどうでもいいことになった。
夫のダニエルは、家族を愛するのと同じくらい、庭の果樹を愛していた。
毎年9月になると、彼は剪定ばさみをポケットに入れ、裏庭を歩き回った。
枝を一本一本眺め、リンゴをそっと手の中で回しながら、まるで果実が「もう食べ頃だよ」と教えてくれるのを待っているかのようだった。
ある午後、8歳の息子ベンが、籠を持って父親の後をついて回っていた。
ベンが真っ赤なリンゴに手を伸ばした。
「それはまだだよ」
ダニエルが言った。
「でも、もう食べられそうだよ」
ダニエルは笑った。
「見た目だけじゃ分からない。優しくひねってごらん」
ベンがひねってみた。
リンゴは枝から離れなかった。
ダニエルが笑う。
「本当にその時が来ていたら、無理やり引っ張らなくても取れるんだ」
私は少し離れた場所から二人を眺めていた。
この瞬間を永遠に残せたらいいのに――そんなことを考えていた。
最近、ダニエルはいつもより疲れていた。
子供たちの前では、私たちはそのことについてほとんど話さなかった。
でも私は、何もかも気になり始めていた。
脚立を使ったあと、どれくらい長く休むようになったか。
食事をどれだけ残すようになったか。
誰も見ていないと思った時、どれほど頻繁に胸元へ手を伸ばしていたか。
ある午後、ダニエルが私の視線に気づいた。
「クレア、心配するのはやめてくれ」
「心配なんてしてないわ」
彼は眉を上げた。
「結婚して27年だぞ。君は今でも嘘が下手だな」
私が何か言い返す前に、フェンスの向こうから声がした。
「ずいぶん豊作みたいね」
隣人のモニカが、枝の隙間からこちらを覗いていた。
50歳くらいの女性で、庭仕事をしている時でさえ、いつも完璧に身なりを整えていた。
モニカは、私よりずっと前からダニエルを知っていた。
二人は同じ人々に囲まれて育ち、若い頃には短い間だけ付き合っていたらしい。
そのことを私に話してくれたのは、何年も前のことだった。
モニカが両親から隣の家を相続し、この近所に戻ってきた時だった。
私は気にしたことなどなかった。
二人の間にあったことは、もう遠い昔の話だったから。
数分後、白いバンがモニカの家の前に停まった。
若い男が工具箱を持って降りてきた。
その夏、彼は何度もモニカの家を訪れていた。
「また配管工さんが来たのね」
私は言った。
モニカが彼のほうを見た。
「古い家だから仕方ないのよ。何かしら壊れるの」
若い男が私たちに気づき、手を振った。
ダニエルも手を振り返した。
しかし、その後もしばらく男を見つめていた。
「どうしたの?」
私が尋ねると、ダニエルは顎をさすった。
「いや……誰かに似てる気がする」

「誰に?」
彼がもう一度見ると、男はすでにモニカの家の中へ消えていた。
「分からない。思い出せないんだ」
ベンが父親を呼び、ダニエルは再び木々のほうを向いた。
彼は息子の肩に手を置き、枝の間から空を見上げた。
「この木は、パパがいなくなったあとも、お前たちに実を食べさせてくれるだろうな」
私の胃がきゅっと締めつけられた。
「ダニエル……」
「何?」
「そんなこと言わないで」
彼はいつもの優しい笑顔を浮かべた。
「ただ、木は長く生きるって言っただけだよ」
「じゃあ、木が長く生きる話だけして。自分がいなくなる話はしないで」
彼は私の手を取り、ぎゅっと握った。
12日後、ダニエルは亡くなった。
葬儀を終えて家に戻った午後、私は眠っている娘のリリーを車から抱き上げた。
ベンは私の隣を歩きながら、父親の古い帽子を胸に強く抱きしめていた。
私はほとんど裏庭を見なかった。
考えていたのは、子供たちを家の中に連れて行き、彼のいない最初の夜をどうにか乗り越えることだけだった。
その時、枝が折れる音がした。
私は立ち止まった。
果樹の向こうから、もう一度ガサガサという音が聞こえた。
「ママ?」
ベンが小声で言った。
私は鍵を彼に渡した。
「ここにいて」
私は庭へ向かった。
すると、モニカがフェンスを半分ほど乗り越えているところだった。
ブラウスが釘に引っかかっていた。
そして、私たちの敷地側には大きな袋が2つ置かれていた。
中にはダニエルのリンゴと梨がぎっしり詰まっていた。
数秒間、私たちはただ見つめ合った。
「何してるの?」
私はついに問い詰めた。
モニカはブラウスを釘から外し、フェンスを降りた。
「大げさね、クレア。売るために持っていくのよ。お金が必要なの」
私は袋を見た。
「私に頼めばよかったでしょう」
彼女は腕を組んだ。
「それで、あなたは『いいわ』って言った?」
「いいえ。子供たちが食べるのよ。あの子たちの父親が育てた果物なの」
モニカは目を転がした。
「でも、ダニエルはもういないでしょう? どうせ半分は腐るわ」
私は言葉を失った。
少し後ろにはベンが立っていた。
今も父親の帽子を握りしめている。
その指に力が入るのが分かった。
私はベンとモニカの間に立った。
「この木はあなたのものじゃない。この土地もあなたのものじゃない。二度と私の庭に入らないで」
「もう、やめてよ。悲しみでおかしくなってるんじゃない?」
「果物を置いて、出て行って」
モニカは私を見つめ、それから袋の一つを手放した。
「何かを自分のものだと決めた途端、あなたは昔からずいぶん執着するのね」
私は眉をひそめた。
「どういう意味?」
「何でもないわ」
「いいえ。何か言いたいことがあるんでしょう」
彼女は再びフェンスを越えた。
そして立ち去る前に振り返り、私を見た。
「面白いわね。あなたの人生全部が、27年前の赤信号一つにかかっていたなんて」
体の中の血が一気に冷たくなった。
「……何ですって?」
しかし、モニカはすでに自分の家へ向かって歩き始めていた。
ベンが私の袖を引っ張った。
「ママ、あの人は何を言ったの?」
「分からないわ」
嘘だった。
私は、彼女が言った「赤信号」が何を意味するのか、正確に分かっていた。
私とダニエルが27年前に出会ったきっかけ。
ダニエルが車で曲がる際に赤信号を無視し、横断歩道を渡っていた私にぶつかったのだ。
私は大きな怪我をしなかった。
ダニエルはひどく動揺した。
彼は自分で私を病院まで連れて行くと言い張り、医師から帰宅を許可されるまで付き添った。
そして翌朝、コーヒーともう一度謝罪の言葉を持って私の家へやって来た。
年月が経つにつれ、それは私たちの間だけの冗談になった。
たった一度の最悪な赤信号が、どういうわけか私たちに27年間の人生を与えてくれた。
人には、私たちがどうやって出会ったのか、大まかな話だけをしていた。
でもダニエルは、実際には自分が赤信号を無視したことを認めるのをずっと嫌がっていた。
その細かい部分を知っているのは、私たち二人だけだった。
少なくとも、私はそう思っていた。
なのに、モニカは知っていた。
その夜、私は自分に言い聞かせた。
モニカが隣に引っ越してきた後、ダニエルが話したに違いない。
きっと、それだけのことだ。
もう疲れ切っていて、それ以上考え続けることができなかった。
翌朝、日の出前。
ベンが私の肩を揺さぶった。
「ママ、外に来て。怖い音がした」
私はガウンを羽織り、彼について行った。
パティオに出た瞬間、私は凍りついた。
すべての果樹から、果実が消えていた。
少しだけ収穫されたのではない。
完全に、すべてなくなっていた。
折れた小枝が芝生を覆っていた。
踏みつぶされた葉が草の上に散らばっている。
ダニエルの木製の脚立は、フェンスの近くに横倒しになっていた。
私は一番近くにあるリンゴの木へ歩いていった。
わずか24時間前まで、果実でいっぱいだった枝に触れた。
胸の奥で、何かが壊れた。
私はモニカの家を見た。
キッチンの明かりは、もうついていた。

私は彼女の家のドアを叩かなかった。
まだ、その時ではなかった。
代わりに、私はすべてを写真に撮った。
枝。
足跡。
脚立。
果実が一つも残っていない木々。
モニカは、私に見つかった後も戻ってきた。
私が警告した後も。
父親の帽子を握りしめた息子がそこに立っているのを見た後も。
数百ドル分の果物だけのために、そんな危険を冒す人はいない。
モニカがしていることは、リンゴが目的ではない。
午前8時になる頃には、私はキッチンテーブルでノートパソコンを開いていた。
最初は、モニカがあれほど大量の果物をどこで売ろうとしているのか調べた。
20分もしないうちに、彼女の名前が週末の地域マーケットと関連していることが分かった。
でも、私の頭から離れなかったのは、彼女が言った言葉だった。
赤信号。
そこで、別の検索をした。
「モニカ ダニエル」
それから二人の姓と、ダニエルが育った町の名前を加えた。
ほとんどの検索結果は役に立たなかった。
しかし、私は一枚の古い写真を見つけた。
27年前に撮影された写真だった。
私は長い間、画面を見つめ続けた。
ダニエルは、私にすべてを話していたわけではなかった。
まったく、そんなことではなかった。
正午までに、私は何本か電話をかけ、写真を印刷し、庭の物置からいくつかの物を取り出した。
その日の午後。
私はモニカの家の前の芝生に立ち、計画の最後の準備をしていた。
玄関のドアが開いた。
モニカの口から出た叫び声は、近所の人たちが外に出てくるほど大きかった。
「一体、何をしてるの?」
彼女の庭の中央には、大きな手作りの看板が立っていた。
「モニカの収穫祭」
その下には、巨大な文字でこう書いてあった。
「この女性は何年もかけて私の夫を奪おうとした。
そして彼が亡くなってわずか12日後、今度は彼が残したものまで奪っている。」
「これは何なの!?」
モニカが叫んだ。
「宣伝よ」
私は答えた。
「果物を売りたいって言ったでしょう?」
彼女は看板へ駆け寄った。
「これを外して!」
彼女が引き抜こうとする前に、私は反対側をつかんだ。
「私の果物を返して」
「頭がおかしくなったの!?」
その頃には、何人もの近所の人たちが歩道の近くに集まっていた。
モニカは周囲を見回した。
これ以上騒ぎを大きくすれば、さらに注目を集めることになると気づいたのだろう。
その時、彼女は看板の横に置いた写真の一枚に気づいた。
私がネットで見つけた古い写真。
そこには、何十年も前のモニカとダニエルが一緒に写っていた。
彼女の表情が変わった。
「この馬鹿な女……」
私は手に力を込めた。
「今、何て言ったの?」
彼女は私を見つめた。
「あなた、本当に何も分かってないのね」
「なら説明して」
「27年よ、クレア。あなたはあの人と27年間一緒にいた。それなのに、目の前にあったものに一度も気づかなかった」
突然、リンゴなんてどうでもよくなった。
看板もどうでもよかった。
大切なのは、一つの質問だけだった。
「あなたは私の夫と浮気していたの?」
モニカの顔が硬くなった。
「違う」
「嘘をつかないで」
「嘘じゃない。私はダニエルの愛人だったことなんて一度もない。あなたとの結婚中は、一度だってね」
「じゃあ、どうして赤信号のことを知ってるの?」
彼女の顎が強くこわばった。
「その夜、ダニエルは私に会いに来る途中だったからよ」
私は彼女を見つめた。
「……何?」
「私たちは会う約束をしていた。でも、ダニエルは来なかった。その後、横断歩道で女性をはねて、病院に連れて行ったと聞いた」
女性。
私のことだった。
「あなたたちは付き合っていたの?」
「ええ」
「そして、私に会った後は?」
「彼は私との関係を終わらせた」
その答えには、誇らしさなど一切なかった。
それでも、何かがおかしかった。
私はモニカの家を見た。
9年前、彼女が両親から相続した家。
私たちの隣の家。
彼女が毎年、私たちの子供たちを育てるダニエルを見ていた家。
そして、彼が年々庭の木を手入れしている姿を見ていた家。
「あなたが彼と浮気していなかったなら、どうしてここへ戻ってきたの?」
「どうして9年間も私たち家族を見ていたの?」
「どうしてダニエルが死んで12日しか経っていないのに、庭の果物を全部盗んだの?」
初めて、モニカはすぐに答えなかった。
彼女の目が玄関のほうへ動いた。
ほんのわずかな動きだった。
でも、私は見逃さなかった。
その時、網戸のドアが開いた。
この夏ずっとモニカの家に工具を持って出入りしていた若い男が、玄関ポーチに出てきた。
今は工具箱を持っていなかった。
「ルーク」
モニカが鋭い声で言った。
「中に戻りなさい」
彼は無視した。
ここ数か月、私は何度も彼を見ていた。
でも、本当の意味で彼の顔を見たことはなかった。
彼がこちらへ近づいてくると、私は何かに引っかかった。
彼を知っているわけではない。
それでも、どこか見覚えがあった。
「母さんがここへ戻ってきたのは、ダニエルが欲しかったからじゃない」
彼が言った。
モニカが彼を振り返る。
「ルーク、やめて」
「もう父さんはいない。今さら、何を守ろうとしてるの?」
母さん。
私はモニカと若い男を交互に見た。
彼は20代半ばくらいに見えた。
胃が沈むような感覚がした。
27年。
「……まさか」
私がつぶやいた。
ルークは母親の隣で立ち止まった。
「3か月前に、ダニエルのことを知ったんだ。母さんがようやく名前を教えてくれた」
モニカは目をそらした。
ルークは続けた。
「僕はここへ来た。会ってみたかったんだ。でも、どうやって見知らぬ男のところへ行って、『あなたは自分が父親だと知らなかった僕の父親です』なんて言えばいいのか分からなかった」
「ずっと待っていたの?」
彼はうなずいた。
「毎週、自分に約束してた。今度こそ父さんに話そうって。母さんは、もっと確かめる必要があるって言ってた。もっといいタイミングがあるって」
彼の声がわずかに震えた。
「でも、そのタイミングはもう来なかった」
一瞬、ルークの表情が、ダニエルが緊張している時の顔とあまりにもよく似て見えた。
私は息をするのも忘れた。
そしてルークが、その言葉を口にした。
「ダニエルは僕の父親です」
私はモニカを振り返った。
27年間の彼女の苦しみが、突然、一本につながった。
でも、まだ一つだけ疑問が残っていた。
「リンゴは?」
モニカが瞬きをした。
「リンゴがどうしたの?」
私は彼女の開いたガレージを指差した。
盗まれた籠がすべてそこにあった。
全部。
「最初から売るつもりなんてなかったのね」
彼女の顔から怒りがゆっくり消えていった。
「9年前、この家を相続した時、私は自分に言い聞かせた。ダニエルにルークのことを話そうって」
「どうして話さなかったの?」
「その後、ベンと一緒にいるダニエルを見たの。毎年、庭で二人が一緒にいるところを。毎年、私は待った。いつか、もっといいタイミングが来るって自分に言い聞かせて」
「話すべきだった」
「分かってる」
彼女の声が小さくなった。
「ルークがここへ来た時、今度こそ話そうと思った。でも、ルークが話す前にダニエルが死んだ」
彼女は私の家を見た。
「あなたたちが葬儀から帰ってくるのを見た。ベンがダニエルの帽子を抱えていた」
「ベンは彼の息子よ」
「ルークだってそうよ!」
モニカは片手で口を覆った。
数秒間、誰も何も言わなかった。
やがて彼女が小さな声で言った。
「全部、あなたのせいじゃないことは分かってる。たぶん、ずっと分かってた。でも、あなたがダニエルの子供たちを連れて家に戻ってくるのを見た時、怒りが込み上げた」
彼女は息を飲んだ。
「あなたは彼と27年間一緒にいられた。あなたの子供たちには父親がいた。でも、ルークには何もなかった」
私はガレージを見た。
「だから木から全部持っていったの?」
「そう」
「どうして?」
彼女の目に涙が浮かんだ。
「ほんの一瞬だけでも、ダニエルの何かを失う痛みをあなたにも感じてほしかったの」
彼女がしたことは残酷だった。
間違っていた。
それでも私は、なぜ彼女がそうしたのか、ようやく理解した。
その後の一週間は、あっという間に過ぎていった。
私はそのほとんどを、ダニエルが残していった人生について考えて過ごした。
そして、その中に彼自身さえ知らなかった人生が存在していたことを理解しようとした。
ある午後、ベンが一本の木の一番高いところに、モニカが取り忘れたリンゴをいくつか見つけた。
私たちは一緒に収穫した。

その夜、私はそれを使ってダニエルの大好きだったアップルパイを焼いた。
そしてベンと一緒に、それを隣の家へ持っていった。
モニカはドアを開けると、驚いた顔をした。
「あなたを許したわけじゃない」
私は言った。
彼女は目を伏せた。
「でも、ルークはダニエルの息子よ」
彼女が顔を上げた。
「そして、それはつまり、彼がベンの兄弟だということよ」
しばらく、誰も何も言わなかった。
「私たちは、もう十分に失ったと思う」
私は続けた。
「だから、ダニエルの残されたものを取り合うんじゃなくて、その一部をどうやって一緒に分かち合っていくか、考えていきましょう」
私はアップルパイを差し出した。
モニカの目に涙が浮かんだ。
彼女はゆっくりとそれを受け取り、横へ一歩退いた。
その後ろには、ルークが立っていた。
そして初めて彼を見た時、私はもう彼を「モニカの息子」だとは思わなかった。
私はそこに、私の夫の息子を見ていた。
