メアリーが遺した約束
妻が双子を出産して亡くなってから3か月間、義母は私とほとんど口をきかなかった。娘たちを救うことに同意した私を、恨んでいるのだと思っていた。
しかし、ようやく彼女が私の家を訪ねてきたとき、私は彼女が沈黙を守り続けていた本当の理由を知ることになった。
メアリーの葬儀が終わると、義母は私たちの生活から姿を消した。
私が娘たちの写真を送るたびに、彼女はいつも同じ二つの言葉だけを返してきた。
「ありがとう」
それだけだった。
私は、その理由を理解しているつもりだった。
メアリーの妊娠中は何度も深刻な合併症が起こり、私たちは何度も恐ろしい思いをした。それでも、最後の診察では、医師たちが二人とも健康だと保証してくれた。
私たちは、ようやく安心し始めていた。
出産当日の朝、病院では赤ちゃんの名前について冗談まで言い合っていた。
メアリーは、双子だからといって名前をそろえる必要はないと言い張った。一方の私は、そんなことは何か月も前に決めておくべきだったと主張した。
彼女は笑い、水が欲しいと言った。
それから数時間後、すべてが変わった。
出産中に深刻な合併症が発生したのだ。
医師たちは、三人全員を救えるとは限らないと告げた。
メアリーは私の指を強く握った。
「娘たちよ。当然でしょう」
私は反対したかった。ほかに方法はないのかと、必死に問いただしたかった。
しかし、彼女はもう一度、私の手を握りしめた。
そして私は、ようやく口にした。
「赤ちゃんたちを救ってください」
翌朝、メアリーは亡くなった。
私は、生まれたばかりの二人の娘と、妻の遺品が入ったバッグを抱えて家に帰った。
バッグの中には、彼女が着ていたトレーナーが残されていた。
私はそれを洗うことも、バッグから取り出すことさえできなかった。
誰もが、気を強く持つようにと言った。
だから私は、ミルクを作り、疲労で記憶が曖昧にならないように授乳のたびに記録をつけ、娘たちがちゃんと呼吸しているか確かめるために、何度も何度もベビーベッドをのぞき込んだ。
姉は食事を作って持ってきてくれたが、そのほとんどに手をつけられなかった。
体重は落ち、眠ることさえ難しくなった。

家の中が静まり返るたびに、自分の声が頭の中によみがえった。
赤ちゃんたちを救ってください。
別の答えを選ぶことはできなかったのだろうか。
そうすれば、メアリーは今も生きていたのだろうか。
彼女自身が選んだことだと、私は分かっていた。
それでも、自分は彼女を救えなかったのではないかという疑問が、どうしても消えなかった。
そして先週の木曜日、玄関のチャイムが鳴った。
ドアの外には、封筒を握りしめ、震えているメアリーの母親が立っていた。
私は、すぐに謝り始めた。
「彼女を失いたくなかったんです。彼女がそうしてほしいと言ったから、私は同意しました。ほかに何かできたはずなのに」
「分かっているわ」
「いいえ。あなたには分かっていません」
彼女は封筒に目を落とした。
「私があなたを責めているから、ずっと会いに来なかったと思っているの?」
私は何も言えなかった。
「メアリーは、あることをあなたに話さないでほしいと私に頼んだの。私は約束した。いつか自分で話す時間があると思っていたのよ」
子供部屋から、赤ちゃんのかわいらしい声が聞こえた。
祖母は廊下のほうを見た。
「座って話せるかしら?」
私たちはキッチンのテーブルについた。
そこは以前、メアリーが赤ちゃんの名前の候補を書いた紙を広げていた場所だった。
彼女の母親は、封筒を膝の上に置いたままだった。
「あなたが知らない、メアリーの子供時代の話があるの」
「私は彼女と9年間、一緒にいました」
「分かっているわ」
「彼女は何でも私に話してくれました」
義母は私の目をまっすぐに見つめた。
「でも、父親が亡くなったあとに何があったのかは、話していなかったのよ」
メアリーの父親が、彼女が8歳のときに心臓発作で亡くなったことは知っていた。
彼女は救急車のことや、玄関のそばに置かれていた母親の靴を覚えていた。
「葬儀が終わってからね」と、義母は話し始めた。
「食事は用意したし、学校にも通わせた。でも、母親としてそばにいることをやめてしまったの」
「どういう意味ですか?」
「メアリーの目は、夫にそっくりだったの。あの子が笑うと、私はその場にいられなくなって、部屋を出なければならなかった」
私はメアリーの笑顔を思い浮かべた。
「どうしてですか?」
「夫に会いたくてたまらなかったから。あまりにも寂しくて、耐えられなかったのよ」
義母の親指が、落ち着かない様子で封筒の表面をなぞった。
「ある夜、あの子が、夫の写真を見ながら泣いている私を見つけたの」
幼いメアリーはソファに上がり、母親の隣に座った。
「ママ、パパに帰ってきてほしい?」
「何よりもそう願っているわ」
母親はそう答えた。
するとメアリーは、こう尋ねた。
「私よりも?」
私の胸が締めつけられた。
「あなたは何と答えたんですか?」
義母は首を横に振った。
「何も答えられなかった」
「彼女はまだ8歳だったんですよ」
「分かっているわ」
「自分は愛されていないと思ったんですか?」
「何年もの間、そう思っていたはずよ」
私は椅子にもたれた。
メアリーは、昔から人に何かを頼むことをひどく嫌がっていた。
水を取ってきてもらうような、ほんの些細なことさえ遠慮した。
いつも、自分が誰かの負担になってしまうことを心配していた。
私は、それが単なる彼女の性格なのだと思っていた。
「それから、あの子は夫の写真を私に持ってこなくなったの」と義母は続けた。
「夫について質問することもなくなった。私は、あの子が立ち直り始めたのだと思っていたのよ」
「お母さんを悲しませないようにしていたんです」
「そうね」
そのとき、赤ちゃんの泣き声が私たちの会話を遮った。
私は子供部屋に行き、小さいほうの娘を抱き上げ、自分の胸に寄せた。
娘はすぐに落ち着いた。
もう一人の娘は、頬の横に小さな拳を置いたまま眠っていた。
二人とも、病院で何が起きたのかを知らない。
いつか、娘たちは尋ねるだろう。
私は、そのときが来ることを何よりも恐れていた。
キッチンに戻ると、祖母は冷蔵庫に貼られた写真を見つめていた。
メアリーが笑いながら、小さな靴を持っている写真だった。
双子だと分かる前に、彼女が買ってきたものだ。
「本当に幸せそうだったわね」と、義母がささやいた。
「ええ」
彼女は視線を落とした。
「あなたたちの結婚式の前に、メアリーはようやく、あの夜が自分に何をもたらしたのかを私に話してくれたの」
「あなたは謝ったんですか?」
「もちろんよ」
「彼女は許してくれましたか?」
「私が自分を愛していることは分かっていると言ってくれたわ。ただ、子供のころに、それを知りたかっただけだと」
私は椅子に座り直した。
「妊娠したとき、あの子はもう一度その話をしたの」と義母は続けた。
「もし何かが起きたら、娘たちに自分は望まれていなかったと思わせてしまうかもしれない。それだけは耐えられないと言っていたわ」
「あなたは何と答えたんですか?」
「何があっても、そばにいると約束したの」
私は封筒を見つめた。
「それなのに、あなたは姿を消した」
義母はびくりとした。
「ええ」
その瞬間、私はあることを思い出した。
出産の数週間前、メアリーと私はベッドに横になっていた。
赤ちゃんの一人が強く蹴り、彼女のお腹が目に見えるほど動いた。
私は笑った。
しかし、メアリーは笑わなかった。
「もし私に何かあったら、この子たちを産まなければよかったって思う?」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「お願い。答えて」
「そんなこと、思うわけがないだろ」
「私がいなくて、寂しくなっても?」
私は彼女のほうを向いた。
「君がいなくなったら、毎日寂しいよ。でも、娘たちのことも毎日愛する」
彼女は泣き始めた。
私は彼女の額にキスをして、疲れているだけだと伝え、きっとすべてうまくいくと約束した。
妊娠中の不安のせいだと思っていた。
今になって、ようやく理解した。
「彼女は、私にも同じような質問をしたんです」と私は義母に告げた。
そして、あの夜の会話を説明した。
義母は驚いたように私を見つめた。
「あの子が、あなたにそんなことを聞いたの?」
「ええ」
「それで、娘たちを望んでいると答えたのね?」
「もちろんです」
彼女は口元を手で覆った。
「それが……あの子が8歳だったときに、私が言うべきだったことなのよ」
私は子供部屋のほうを見た。
「彼女は、どうしてあんな質問をしたのか、私には話してくれませんでした」
「娘たちが生まれたら話すつもりだったのよ」
「どうして、そのときまで待つ必要があったんですか?」
「たった一つ、答えてもらえなかった質問が、今でも自分を怖がらせている。そのことを恥ずかしいと思っていたの」
「私の前では、そんなことを恥ずかしがる必要なんてなかったのに」
「分かっているわ」
私は、メアリーに対して腹立たしさを覚えた。
娘たちを選んだことに対してではない。
ずっとそばにいた私に、その痛みを打ち明けてくれなかったことに対してだ。
けれど、彼女が泣いていたときのことを思い出した。
もしかしたら、彼女は説明しようとしていたのかもしれない。
それなのに私は、彼女を安心させることばかりに気を取られて、きちんと耳を傾けていなかったのではないだろうか。
義母は、封筒を私のほうへ滑らせた。
「これは、あの子が私のために書いた手紙なの。もし自分に何かあったら、あなたに見せてもいいと言っていた。今まで、どうしても渡すことができなかったのよ」
「彼女は何を恐れていたんですか?」
義母は封筒をさらに押し出した。
「読んでちょうだい」
私は紙を広げた。
そこには、見慣れたメアリーの筆跡が並んでいた。
彼女がときどき文字の上に描いていた、小さなハートまであった。
私は読む前に、そっと指で文字をなぞった。
「ママへ」
「ママが私を愛してくれていたことは、分かっているよ」
「今は、それが分かる」
「でも、小さいころの私は、ママが私と過ごす毎日を全部手放してでも、パパに戻ってきてほしいと思っているんじゃないかと考えていたの」
「ママがそんなつもりではなかったことも、分かっているよ」
「それでも私は何年もの間、ママを悲しませないように、できるだけ静かにしていようと頑張っていた」
「もうすぐ、私にも二人の娘が生まれる」
「どう言えばいいのか分からないくらい、もう二人を愛しているよ」
「そして、私は怖いの」
「娘たちが怖いわけじゃない」
「悲しみが、人にどんなことを信じ込ませてしまうのかが怖いの」
「あの人は、きっと娘たちを愛してくれる」
「それは分かっている」
「あの人が、もうどれだけ私の心を癒やしてくれたのか、本人は気づいていないけれど」
「いつか、ちゃんと話すつもり」
「たぶん、私は何も心配する必要なんてないのだと思う」
「でも、もし私に何かあったら、あの人は自分を責めてしまう」
「ほかに何か言うべきことがあったんじゃないか、何かできることがあったんじゃないかって、ずっと考えてしまうと思う」
「お願いだから、娘たちに、自分たちのせいでお父さんが大切な人を失ったと思わせないで」
「あの人を信じていたと伝えて」
「私が二人を望んでいたと伝えて」
「それから、お願い、ママ」
「いなくならないで」
「約束したでしょう?」
「娘たちには、自分たちが望まれて生まれてきたと知ってほしいの」
「いつだって、ずっと」
私は手紙を二度読んだ。
そして、ある一文で目が止まった。
「あの人が、もうどれだけ私の心を癒やしてくれたのか、本人は気づいていないけれど」
私は3か月間、病院での決断を何度も何度も思い返していた。
メアリーを裏切ってしまったのだと、自分を責め続けていた。
けれど、彼女の心に残っていたのは、まったく別の記憶だった。
寝室で過ごした、あの夜。
私には理解できなかった、一つの質問。
そして、自分でも忘れかけていた答え。
私は知らないうちに、彼女が自分には愛される価値があると信じる手助けをしていたのだ。
「彼女は、私を信じていたんですか?」
義母はうなずいた。

「何が起きるか分からなくても?」
「自分が死ぬと思っていたわけじゃないのよ。ただ、悲しみに囲まれて育つことがどんなものか、知っていたから怖かったの」
私はメアリーの言葉をもう一度読み返した。
「私があなたを信じていたと伝えて」
病院で、私は必死に、ほかに方法があると医師たちが言ってくれるのを待っていた。
そして、彼女は私の手を握りしめた。
「娘たちよ。当然でしょう」
私は、その手の感触を別れの合図だと思っていた。
けれど、彼女はもしかすると、自分がすでに下した決断を尊重してほしいと、私に託していたのかもしれない。
私は手紙を丁寧に広げ直した。
「彼女は、あなたに姿を消さないでほしいと言っていたんですね」
「分かっているわ」
「あなたは約束したんです」
「ええ」
「それなのに、私は娘たちの写真を送るたびに、あなたから二つの言葉しか返ってこなかった」
義母はうつむいた。
「それだけしか、あの子たちに言うことがなかったんですか?」
彼女は泣き始めた。
私は慰めなかった。
「娘たちを見るたびに、メアリーのことを思い出してしまったの」と、彼女は言った。
「あの子がここにいて、この子たちを抱いているはずなのに。そればかり考えていたのよ」
「娘たちは、ここにいます」
「分かっているわ」
「メアリーはいません。でも、娘たちはここにいるんです」
「分かっているわ」
「あなたは、自分が黙っていることで、彼女がどれだけ傷ついたのか知っていたはずです」
義母はうなずいた。
「それなのに、私たちを置き去りにしたんです」
「そうよ」
私は、彼女に自分を弁護してほしかったのかもしれない。
何か言い訳をしてくれれば、それに反論することもできた。
けれど、彼女はただ、こうささやいた。
「メアリーは子供のころ、私が戻ってくるのをずっと待っていた。そして今、私はあの子の娘たちにも、同じように待たせてしまったのね」
私は流し台のほうへ歩いた。
タオルの上には、洗い終えた哺乳瓶が4本、乾かしてあった。
妊娠中、メアリーは、私がずいぶん几帳面になったとからかっていた。
今では、どちらの娘にミルクをあげたのかさえ思い出せない夜があるから、授乳の記録をつけている。
「あなたが私を嫌っているのだと思っていました」と、私は言った。
義母が顔を上げた。
「あなたが、自分が同意したことを許せないのだと思っていたんです」
私はいったん顔を背けた。
「そのとおりです」
そして、彼女のほうを向き直った。
「でも、どうして来てくれなかったんですか?」
彼女は頬をぬぐった。
「あの子たちを見たとき、メアリーがここにいてくれたらと思ってしまうのが怖かったの。そんなことを考える自分が恥ずかしくて、だから会いに来られなかった」
「メアリーが、絶対にしないでほしいと頼んだことをしたんですね」
「分かっているわ」
私はカウンターを強く握った。
「どうして今日、来ようと思ったんですか?」
「昨日、あなたから写真が届いたでしょう?」
私は二人を毛布の上に寝かせて写真を撮っていた。
一人は笑い、もう一人は妹の袖をつかんでいた。
写真の下には、こう書いていた。
「歌を歌うと、二人とも笑うようになりました」
「そのメッセージを読んだの」と義母は言った。
「それで、メアリーが小さいころ、よく歌っていたことを思い出したの」
彼女は少し言葉を止めた。
「それから、あの子と最後に一緒に歌ったのがいつだったのか、もう思い出せないことに気づいたのよ」
彼女はメアリーの手紙を取り出し、もう一度読み返した。
そして、出産前に買っておいた、まだ開封していない二着のベビードレスを見つけた。
その朝、彼女は車で私の家まで来たものの、1時間近く玄関の外に立ち尽くしていたという。
「もう少しで帰るところだったわ」
「何があなたを引き止めたんですか?」
「娘たちが大きくなって、どうしておばあちゃんは一度も会いに来てくれなかったのかと尋ねる姿を想像したの」
私は子供部屋のほうを見た。
「そのとき、何と答えるつもりだったんですか?」
彼女は首を横に振った。
「二人を傷つけずに答える方法なんて、思いつかなかったわ」
私たちの間に、沈黙が流れた。
やがて、私は今まで誰にも話したことのないことを打ち明けた。
「時々、メアリーがここにいてくれたらと、どうしようもなく思うんです。そのせいで、娘たちを見ることさえ申し訳なく感じることがあります」
彼女は黙って聞いていた。
「娘を抱いていると、メアリーがこうして抱いているはずなのに、と思ってしまうんです。初めて笑う瞬間を見てほしかった。どちらの子が冷たいミルクを嫌がるのかも、知っていてほしかった」
喉が詰まった。
「それから、病院で自分が言ったことを思い出すんです」
「メアリーが、あなたに頼んだのよ」
「私は同意しました」
「彼女を信じていたからでしょう?」
私は首を横に振った。
「自分が彼女を犠牲にして、娘たちを選んだような気がしてならないんです」
義母はテーブル越しに手を伸ばした。
私はその手を引っ込めた。
彼女を憎んでいたからではない。
ただ、最後まで話し終えたかったのだ。
「娘たちが生まれなければよかったなんて、一度も思ったことはありません」
「信じているわ」
「でも、メアリーには死んでほしくなかった」
「当然よ」
私は涙に濡れた彼女の顔を見つめた。
「その二つは、同じ願いじゃないのよ」
彼女の言葉を聞いて、メアリーの質問を思い出した。
「私がいなくなって、寂しくなっても?」
私は、毎日彼女を恋しく思いながらも、娘たちを同じように深く愛し続けると約束した。
彼女は、私の言葉を信じてくれていた。
赤ちゃんの一人が泣き始めた。
私は子供部屋へ行き、娘を抱き上げた。
すると、もう一人まで目を覚ましてしまった。
気がつけば、私は両肩に一人ずつ娘を抱いていた。
祖母は、ドアのところからその様子を見ていた。
「メアリーなら、きっとこれを見て笑ったでしょうね」と私は言った。
「どうして?」
「買い物袋一つ、落とさずに持って帰れない人なのにって、よくからかわれたんです」
義母は小さく笑った。
「私も、一人抱いていいかしら?」
私は少し迷った。
彼女は視線を落とした。
「分かったわ」
「この子たちを、あなたが会いに来られるようになるまで、ずっと待たせるわけにはいきません」
「分かっているわ」
「また姿を消すかもしれないのに、来てくれると娘たちに約束するつもりはありません」
彼女はうなずいた。
「これから行動で示すわ。もし、あなたが許してくれるなら」
私は、小さいほうの娘を彼女に渡した。
義母は娘を胸に抱き寄せた。
「こんにちは、かわいい子。おばあちゃんよ」
小さな指が、彼女の襟をつかんだ。
彼女は涙を流しながら微笑んだ。
その日の午後、すべてが完全に元どおりになったわけではなかった。
3か月もの沈黙は、彼女が泣いたからといって消えてしまうものではない。
けれど、彼女は翌朝、また家に来た。
その次の日も来た。
哺乳瓶を洗い、娘たちの泣き声の違いを覚え、私が眠れるように二人の面倒を見てくれた。
ある日の午後、ミルクを飲んでいた小さいほうの娘が、祖母の親指を小さな指でぎゅっと握った。
義母は、ぴたりと動きを止めた。
「メアリーも、よくこうしていたわ」
彼女はそうささやき、涙を浮かべながらドアのほうを見た。
悲しみに押しつぶされる前に、その場から逃げ出したくなる気持ち。
私は、その衝動を理解していた。
しかし、そのとき赤ちゃんが不満そうな声を上げた。
義母は視線を落とした。
「おばあちゃんは、ここにいるわ」
そうささやくと、涙をぬぐい、再び娘にミルクを飲ませ始めた。
今度は、彼女はその場にとどまった。
1週間後、義母は古いアルバムを持ってきた。
そこには、前歯が抜けたメアリーや、曲がった誕生日用の帽子をかぶったメアリー、そして父親の肩に乗っているメアリーの写真があった。
義母は最後の写真にそっと触れた。
「何年もの間、これを見ることができなかったの」
それから、メアリーがもう一度肩車をしてほしいとせがみ、父親が足の疲れたふりをしていたときの話をしてくれた。
私たちは一緒に笑った。
再び笑える日が来るなんて、思ってもいなかった。
そのあと私は、病院から持ち帰ったバッグを開け、メアリーのトレーナーを取り出した。
そこには、彼女が使っていた石けんの香りが、かすかに残っていた。
私は長い間それを抱きしめてから、丁寧にたたみ、アルバムの隣に置いた。
もう、バッグの中に隠しておくことはなかった。
帰る前に、義母がそれに気づいた。
「病院に行った日も、これを着ていたわね」と彼女は言った。
私はうなずいた。
「初めて二人で旅行したときに買ったんです。あの週末は雨で、彼女は天気までロマンチックだと言い張っていました」

義母は微笑んだ。
「あの子らしいわね。どんなことがうまくいかなくても、その中から何か良いことを見つける子だった」
私は、メアリーがいつも袖を手の甲まで引っ張っていたせいで、少し伸びてしまった袖を見つめた。
「これをバッグから出したら、彼女を手放してしまうような気がしていたんです」
「いいえ」と義母は言った。
「これは、娘たちが母親のことを知るためのものなのよ」
その夜、私は二つのベビーベッドの間に座った。
娘たちに、母親が名前についてどれほど議論していたか、歌がどれほど下手だったか、そして出産当日の朝、私が水を見つけられずにいたとき、どれほど楽しそうに笑っていたかを話した。
一人の赤ちゃんが、小さな拳を振った。
もう一人は、じっと私の顔を見つめていた。
「君たちのお母さんは、二人を望んでいたんだよ」
私は、小さな手にそっと触れた。
「二人とも、心から望まれて生まれてきたんだ」
そして、もう一度伝えた。
「パパも、二人を心から愛しているよ」
私は、これからもずっとメアリーを恋しく思い続けるだろう。
けれど、いつか娘たちが、どうしてお母さんはここにいないのかと尋ねたとき、私は決して、君たちのせいでお母さんを失ったのだとは言わない。
二人の顔を見る前から、母親がどれほど深く愛していたのかを話そう。
母親の笑い声についても話そう。
そして、彼女が私に自分を信じてほしいと願ったとき、私は彼女を信じたのだと伝えよう。
私は二人の額にキスをして、明かりを消した。
明日になれば、娘たちはお腹を空かせて目を覚ますだろう。
おばあちゃんも、また来てくれる。
そして私たちは一緒に、メアリーのことを娘たちに語り続けていく。
