夫は亡くなったけれど、私は息子が私を信頼してくれていると信じていた。ところが、息子が2か月もの間、週末の過ごし方について嘘をついていたと知り、恐ろしくなった。真実を探ろうとすれば、私は長年心の奥底に押し込めてきた悲しみと向き合わなければならなかった。
「息子さんはいつ帰ってくるの? もう何週間もうちに泊まっているんでしょう!」
デニースの質問に、私は危うくコーヒーをこぼしそうになった。
「デニース、何を言っているの? ネイサンは昨日からあなたの家にいるはずよ!」
「ローラ、私は何週間もあなたの息子に会っていないわ」
土曜日の夜、もうすぐ9時になろうとしていた。16歳の息子ネイサンは、親友のコールの家に泊まることになっていた。
「でも、ネイサンは毎週末コールの家に泊まっているじゃない!」
「コールは私に、ネイサンの家に泊まるって言っているのよ。毎週、同じことの繰り返しなの」
私たちの息子は、幼稚園の頃からずっと仲が良かった。
この2か月間、毎週金曜日になると、ネイサンは私に「行ってきます」のキスをして、コールの家に泊まると言ってリュックを背負い、出かけていた。
「デニース、最後にネイサンに会ったのはいつ?」
「8月の初めだったと思う。コールは?」
「同じよ」
8週間。
8月初めから9月末まで、2人の息子はそろって私たちに嘘をついていたのだ。
デニースとの通話を続けたまま、私はネイサンに2回電話をかけた。どちらも留守番電話につながった。

「コールも電話に出ないわ!」デニースが叫んだ。
私はネイサンから届いた最新のメッセージを確認した。
「ママ、コールとピザを注文したよ。先に寝ててね。愛してるよ」
文字を打つ指が震えた。
私はもう一度メッセージを送った。
「ネイサン、あなたがコールの家にいないことは分かっているの。今すぐ電話して」
メッセージは配信されたが、開封されることはなかった。
「ローラ、もしあの子たちに何かあったらどうしよう?」
「うちに来て。今夜中に2人を見つけるわ」
20分後、デニースが到着した。
私たちは一緒に息子たちの友人に連絡し、2人が普段よく行く場所を一つずつ確認した。しかし、誰一人として彼らを見かけた人はいなかった。
ネイサンの部屋を探していると、デスクライトの下にレシートが挟まっているのを見つけた。
そこには、サンドペーパー、木工用接着剤、絵筆と書かれていた。
その買い物を見て、3週間ほど前に息子と交わした会話を思い出した。
「ママ、パパの物って、まだ残っている?」
「いくつかはね」
「それを見てもいい?」
「また今度ね、あなた」
私は請求書の支払いなどに追われ、息子の話をほとんど聞いていなかった。
夫のマイケルが亡くなってから、3年が経っていた。
彼の遺品を整理することができず、私はすべて箱に詰めたままにしていた。
ネイサンは、最近になるまでそのことを尋ねなくなっていた。
私はレシートを持って階下へ行き、デニースに見せた。
「デニース、これを見て」
「どうしてあの子たちが木工道具なんて必要なの?」
その瞬間、ある可能性が頭に浮かんだ。
マイケルの父親であるフランクは、今もマイケルが育った家に住んでいた。その家の裏には、彼の作業場がある。
私たちはマイケルの葬儀以来、一度も話をしていなかった。
フランクは、私がマイケルの思い出を消そうとしていると責めた。私は、私の悲しみを勝手に決めつけないでほしいと言い返した。
結局、どちらも謝らなかった。
私はフランクに2回電話をかけたが、応答はなかった。そこで、留守番電話にメッセージを残した。
「フランク、ネイサンが行方不明なの。もしあの子から連絡があったなら、すぐに電話して」
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午後11時までに、私とデニースは警察に通報し、2人の少年の特徴を伝え、すでに捜索した場所についても説明した。
真夜中になると、私たちは一緒にキッチンのテーブルに座っていた。
「ネイサン、最近何か変わった様子はなかった?」
私は、日曜日になると息子がひどく疲れていたこと、シャワーの時間が長くなったこと、そして質問をしても曖昧な答えしか返ってこなかったことを思い出した。
「ただ成長しているだけだと思っていたわ」
「私もよ」とデニースが小さな声で言った。「コールも、すごく秘密主義になっていたの」
私はテーブル越しに手を伸ばし、彼女の手を握った。
「きっと見つかるわ」
それでも、私は考えずにはいられなかった。
私は本当に、ネイサンの人生をどれほど理解していたのだろう。
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午前4時6分、ようやくフランクから電話がかかってきた。
「ネイサンはどこなの?」私は問い詰めた。
「2人ともここにいる。無事だよ。携帯電話を作業場で充電していたんだ。目が覚めて、ようやく君のメッセージに気づいた」
「ネイサンに電話を代わって」
「ローラ、説明させてくれ」
「先に息子と話をさせて、フランク」
数秒後、ネイサンが電話に出た。
「ママ?」
「けがはない?」
「ないよ」
「コールは大丈夫?」
「うん」
「じゃあ、どうして電話に出なかったの?」
息子はしばらく黙っていたが、やがて何があったのかを話し始めた。
「メッセージは見たよ。電話に出るのが怖かったんだ。じいちゃんは、そのあと僕たちが携帯の電源を切ったことは知らなかった」
私は目を閉じた。
安堵と怒りが一気に押し寄せてきた。
「あなたたちのせいで、私たちは一晩中探し回ったのよ」
「ごめんなさい」
「フランクに車で送ってもらって、今すぐ帰ってきなさい」
私はすぐにデニースにも連絡し、コールを迎えに行けるようにした。そして、警察にも2人が無事に見つかったことを伝えた。
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午前4時37分、玄関の鍵が回る音がした。
ネイサンが一人で入ってきた。
「今までどこにいたの!? 私たちがどんな思いをしたか分かっているの!?」
「ママ、僕は……」
「ネイサン、これ以上嘘をつくのは許さないわよ! 2か月よ! 夜はどこで過ごしていたの!? フランクのところにいたの?」
息子が顔を上げた。
そのとき初めて、彼がどれほどつらそうな顔をしているかに気づいた。
まぶたは泣いたせいで腫れ、髪には木くずが絡まっていた。
あとになって知ったのだが、フランクから秘密を終わりにすると告げられたとき、ネイサンは泣いたのだという。
しかし、彼の肩にかかっていた上着を見た瞬間、私はドア枠を強く握りしめた。
それはマイケルが昔着ていた茶色の作業着だった。
ポケットが破れているところまで、昔のままだった。
夫が亡くなってから、一度も見ていなかった服だった。
「ああ、ネイサン……いったい何をしたの? どうしてもっと早く話してくれなかったの!?」
息子はうつむいた。
「じいちゃんが家を売るんだ。僕とコールで、パパの物を残すために手伝っていたんだよ」
「パパの物って?」
ネイサンは目をこすった。
「パパが僕が生まれる前に作り始めた物があるんだ。僕、それを完成させたかった」
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ネイサンの説明によると、2人は夜をフランクの家の客室で過ごし、日中は作業場で作業をしていたという。
フランクは、2人の母親がそれぞれの息子は別の場所にいると信じていることを、最初から知っていた。
「僕が、ママには言わないでってじいちゃんに頼んだんだ」とネイサンは言った。
「フランクは大人なのよ。もっと分別を持つべきだったわ」
「どうして私に相談してくれなかったの?」
私は続けて尋ねた。
「だって、ママならダメって言うから」
「そんなこと、分からないでしょう」
「ママ、じいちゃんの家の前の道を車で通ることさえ嫌がるじゃないか」
私が反論する前に、ネイサンは続けた。
「先月、パパが僕と同じ年だった頃、どんな人だったのか聞いたんだ。そしたらママは、ゴミを出してきてって言った」
ゴミ袋を息子に渡したときのことが、すぐに頭に浮かんだ。
「ママは忙しかったんだよ」と彼は言った。「パパのことを聞くと、いつも忙しいんだ」
私は椅子を引いて座り、息子と向き合った。
私にも至らないところはあった。しかし、息子がついた嘘については、きちんと責任を取らせなければならなかった。
「来週末は家にいなさい。お互いの信頼を取り戻すまで、お泊まりは禁止よ」
ネイサンはうなずき、それを受け入れた。
「それから明日、私はあなたのおじいちゃんの家に行くわ」
「本当に行くの?」
「ええ。あなたたちが何をしていたのか、自分の目で確かめたいの」
息子の目に、再び涙が浮かんだ。
「そうしたら、どうして僕がやめられなかったのか、分かってくれるかもしれない」
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その日の午後、私は3年ぶりにフランクの家を訪れた。
彼は玄関で私を迎えた。
「ローラ、すまなかった」
「あなたは8週間もの間、2人の母親に、それぞれ自分の息子が別の場所にいると思い込ませたのよ。フランク、あなたはすぐにでも、そんなことをやめさせることができたはずよ」
「ネイサンが、君には言わないでくれと頼んだんだ」
「あの子は16歳よ。あなたは大人でしょう、フランク。もっと分別を持つべきだったわ!」
彼は床に目を落とした。

「助けになっているつもりだったんだ」
「嘘をつかなくても助けることはできたはずよ。これからは、私たちの許可なしに会うことは認めないわ。それに、あなたが私たちの信頼を取り戻すまでは、泊まりも禁止よ」
フランクは静かに同意した。
デニースもコールと一緒に来ていた。コールが置いていった道具を取りに来たのだ。
「コールは3週間前に私たちに話そうとしていたの。でも、ネイサンが説得して、黙っていることにしたのよ」
私は2人の少年に向き直った。
「ネイサン、それはコールに対して不公平だったわ」
ネイサンは恥ずかしそうにうなずいた。
「分かってる。ごめんなさい。でも、ママ、見てほしいものがあるんだ」
彼は私を作業場へ連れていった。
窓の下に、木製のロッキングチェアが置かれていた。
それを見た瞬間、私は何もかも思い出した。
マイケルはネイサンが生まれる前に、この椅子を作り始めたのだ。
赤ん坊を抱いて揺らしながら、眠りにつかせる自分の姿を思い描いていた。
けれど、彼は椅子を完成させることができなかった。
今、その椅子には欠けていた座面が取り付けられ、粗かった木の表面も丁寧に磨かれていた。
私は片方の肘掛けに指を滑らせた。
「本当にあなたがこれを作ったの?」
ネイサンはうなずいた。
「コールも手伝ってくれた。じいちゃんが教えてくれたんだ」
私は、マイケルが脚を一本だけ短く作ってしまったと冗談を言っていたことを思い出した。
「あなたのお父さんは、これを見たらきっと喜んだでしょうね」
ネイサンは私の表情をうかがった。
「どうして今まで、僕にこの話をしてくれなかったの?」
私は答えられなかった。
代わりに、戸口に立っていたフランクが口を開いた。
「ローラ、ネイサンがまだ君に話していないことがあるんだ」
⸻
フランクは、もっと小さな家に引っ越すことを決めていた。
一人で家を維持するのが難しくなったため、家族が暮らしてきた家を売るつもりだった。
8月、彼はそのことをネイサンに伝えていた。
「だから毎週末、ここに来るようになったんだ」とネイサンは言った。「じいちゃんは、あと数週間で引っ越すんだよ」
私はマイケルが手作りした家具や棚、作業場に散らばる道具を見回した。
「あなたたちは、これを全部残そうとしていたの?」
ネイサンはうなずいた。
「じいちゃんが引っ越すまでに急いで作業すれば、全部完成させられると思ったんだ」
「でも、家に作業場全部を持って帰るわけにはいかないわ」
その瞬間、息子の表情が曇った。
「そうだよね、ママ。もちろん、無理だよね」
「ネイサン、そういう意味じゃ……」
「ママは今日ここに来たばかりじゃないか。今さら現れて、最初から一緒に頑張っていたみたいな顔をしないでよ」
私は自分の悲しみについて説明したかった。
けれど、別の方法を試すことにした。
「あなたにとって一番大切なものは何? いくつかなら家に持って帰れるわ」
彼は困ったように部屋を見回した。
「選べないよ」
「それなら、今日は決めなくてもいいわ」
ネイサンは作業場を出ていった。
フランクが後を追おうとしたので、私はそっと彼を止めた。
「少し一人にしてあげて」
⸻
その日の夕方、デニースから電話があった。
「コールが落ち込んでいるの。ネイサンと私のどちらを選ぶか、あの子に悩ませるべきじゃなかったわ」
「その通りね。ネイサンと話してみるわ」
電話を切ったあと、私は息子の部屋のドアをノックした。
「少し話せる?」
彼はベッドに座っていた。
「また説教なら、もう疲れたよ」
「コールのことよ」
彼は床を見つめた。
「分かってる。コールに嘘をつかせるべきじゃなかった」
「コールに謝りなさい。それから、お互いの信頼を取り戻すまでは、お泊まりも禁止よ」
「分かった」
私は彼の隣に腰を下ろした。
「それと、私からもあなたに謝らなければならないことがあるの」
息子の顔に驚きが浮かんだ。
「パパが亡くなったあと、私たちの生活を今までどおりに保つことが、2人にとって一番いいと思っていたの」
「ママはパパの話をしなくなった」
「そうね」
「どうして?」
「パパがもう帰ってこないということを、話すたびに思い知らされたからよ」
彼は両手を組み合わせた。
「パパがどんな声だったのか、時々思い出せなくなるんだ」
その告白は、私が想像していた以上に胸に突き刺さった。
「じいちゃんは、パパの話をしてくれるんだ」と彼は続けた。「僕が覚えていないことも、じいちゃんは覚えているから」
「私も、もっとあなたに話してあげるべきだったわ」
「今からでも話せるよ」
私は立ち上がった。
「一緒に来て」
⸻
寝室のクローゼットの奥には、マイケルが亡くなってから一度も開けていない箱が置かれていた。
私はそれをベッドの上に運び、ふたを開けた。
中には、彼のノート、写真、壊れた腕時計、そして折りたたまれた書類が入っていた。
ネイサンはロッキングチェアの設計図を手に取った。
その隅には、マイケルの筆跡でこう書かれていた。
「僕たちの小さな息子のために」
ネイサンは、指先でその文字をそっとなぞった。
「これ、パパが僕のために作ったの?」
「あなたが生まれる前にね」
「どうして見せてくれなかったの?」
「中を見る勇気がなかったのよ」
ネイサンは設計図に目を落とした。
「ママを傷つけたかったわけじゃないんだ」
「それは分かっているわ。でも、私たちを怖がらせたし、コールまで嘘に巻き込んでしまったでしょう」
「ママが、もう行かせてくれなくなると思ったんだ」
私は、その言葉がつらい真実であることを認めた。
「そう思わせてしまうような理由を、私が作ってしまったのね」
彼は私が持っていた写真に気づいた。
そこには、ひどく焦がしたパイを持ってキッチンに立つマイケルが写っていた。
「あなたのお父さんは、一度、レシピを見ずに感謝祭のデザートを作ろうとしたの。パンプキンパイだったわ。少なくとも、本人はそのつもりだったみたいだけど」
ネイサンが笑った。
「そんなにひどかったの?」
「ひどいなんてもんじゃなかったわ。なのに、黒焦げの生地はわざとだって言い張ったのよ」
彼は父親の笑顔を見つめた。
「ほかの話も聞かせて」
私は息子の隣に座り、今まで心の奥に閉じ込めていた思い出を語り始めた。
もう、会話を終わらせるための言い訳を探すことはしなかった。
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次の土曜日、私は自分でネイサンをフランクの家まで連れていった。
私は訪問の許可を取り、デニースもコールが午後の間、一緒に過ごすことを認めていた。
フランクは外で私たちを待っていた。
「ローラ、きちんと謝りたい」
「それなら、これからを変える手伝いをしてちょうだい」と私は言った。「ネイサンにはおじいちゃんが必要よ。でも、私が母親だということを尊重してほしいの」
フランクはうなずいた。
「そうするよ」
家に入ると、コールが作業台のそばで待っていた。
ネイサンは彼のところへ歩いていった。
「嘘をつき続けさせて、ごめん」
コールは肩をすくめた。
「お前、あと1週間だけって何度も言ってたじゃないか」
「分かってる。本当に悪かった」
「いつかバレると思っていたよ。母さんにも話したかった」
「もう二度と、こんなことに巻き込まない」
コールは慎重に彼を見つめた。
「いいか。次に同じことがあったら、僕は母さんに話すからな」
ネイサンはかすかに笑った。
そして、マイケルの道具を整理し始めた。
「私も手伝おうか?」
私が尋ねると、息子は答えた。
「大丈夫、自分でできるよ」
私は彼の邪魔をしないようにした。
ネイサンは黙々と作業を続け、フランクが箱に物を詰めていた。
やがて、息子の手が止まった。
明らかに、何を残せばいいのか分からなくなっていた。
「何を残せばいいのか、分からないよ」
「今日、全部決めなくてもいいのよ」
「でも、じいちゃんは引っ越すんだよ、ママ。決めなきゃいけないんだ」
彼の言うとおりだった。
私はいつもの癖で、すべてを整理し、息子に代わって選ぼうとしていた。
けれど、今回は違う方法を試すことにした。
私はマイケルのノートを開いた。
「お父さんは、自分が作った物の設計図を残していたの。持って帰れない物は、写真に撮って残しておくのはどうかしら?」
少し考えたあと、ネイサンは私にカメラを渡した。
「作業台から撮って」
私は、息子が指さす場所を撮影した。
「パパが作ったんだ。これは置いていきたくない」
そこには、マイケルのイニシャルが刻まれた小さな引き出しがあった。
「引き出しだけでも、持って帰れないかな?」
フランクが手伝い、私たちは引き出しを取り外した。
ネイサンは、それを大切そうに抱きしめた。
「これなら、残せるね」
私たちはロッキングチェアのところへ戻った。
ネイサンは肘掛けをそっとなでた。
「あと一度、仕上げの塗装をすれば完成なんだ」
私は、父親の作品を完成させればすべてが元どおりになると、息子に約束してあげたかった。
けれど、悲しみというものは、完全に修復できるものではない。
「手伝ってもいい?」
私が尋ねると、ネイサンは少し迷ってから布を差し出した。
「ここから始めて。塗りすぎないでね」
私は息子の指示どおりに作業した。
初めて、私は自分のやり方を押しつけようとしなかった。
作業が終わると、ネイサンは椅子をじっと見つめた。
「パパは、完成した姿を見ることができなかったね」
「そうね」と私は答えた。「でも、パパはあなたに会えることを楽しみにしていたから、この椅子を作り始めたのよ」
ネイサンは私を振り返った。
「本当に?」
「あなたが生まれる前から、パパはいつもあなたの話をしていたわ」
今度は、息子に尋ねられるのを待たずに、私はまた一つ思い出を語った。
⸻
3週間後、ロッキングチェアは私たちのリビングルームに置かれていた。
フランクは引っ越しを終え、ネイサンは道具の一部と引き出し、そしてマイケルのノートを手元に残した。
コールはデニースに謝罪した。
少年たちは以前と同じように友達であり続けたが、今回の出来事がなかったことになったわけではなかった。
お泊まりは禁止されたままだった。
しかし、約束を正直に伝え、電話にはきちんと出るようにすることで、私たちの信頼は少しずつ取り戻されていった。
そして、私自身にも変わるべきところがあった。

ある晩、ネイサンがロッキングチェアのそばにいる私を見つけた。
「ママ、ちゃんと揺れるの?」
「こっちに来て、見てごらんなさい」
私は椅子に座り、ゆっくりと揺らしてみせた。
ネイサンは笑った。
「じいちゃんが言っていたよ。パパは昔、テーブルの脚を一本だけ短く切ってしまったんだって」
私はそのときのことを思い出して笑った。
「そうなのよ。あの傾いたテーブルで、何か月も夕食を食べていたわ」
「どうして直さなかったの?」
「直すって言っていたわ。でも、そのあと別の物を作り始めてしまったのよ」
ネイサンはくすくす笑った。
「それ、じいちゃんらしいね」
「いいえ。あなたのお父さんにそっくりよ」
彼は私の向かいに座った。
「そのテーブルの話をもっと聞かせて」
私は、私たちが初めて暮らしたアパートのことや、マイケルが手作りの品で私を感心させようとした夜のことを話した。
話の途中で、胸がいっぱいになり、喉が詰まった。
ネイサンは急かすことなく、静かに待ってくれた。
3年前の私なら、きっと別の話題に変えていただろう。
けれど今は違った。
私は息子の手を取った。
「今でもパパに会いたいわ、あなた」
「僕もだよ、ママ」
私は息子の指を握り、最後まで話を続けた。
ようやく、マイケルのことを思い出すのは、私たちのどちらか一人が背負わなければならない重荷ではなくなった。
それは、2人で分かち合えるものになったのだった。
