37年来の親友が、旅行の最終日に「最後の記念写真を一緒に撮りたい」と言ってきた。
なぜ「最後の」写真なのかと尋ねると、彼女は奇妙な笑みを浮かべ、そっとささやいた。
「だって明日、あなたは私がこの37年間、本当はどんな人間だったのかを知ることになるから……」
エミリーと私は、7歳のときからずっと親友だった。
同じ通りで育ち、同じスクールバスに乗り、やがて同じオフィスで働くようになった。人生の大切な節目のほとんどを、私たちは互いに支え合いながら乗り越えてきた。
私が初めて失恋したとき、慰めてくれたのはエミリーだった。彼女の両親が別居したときには、私の家族が何週間も彼女を家に迎え入れた。
私たちの母親たちは、よく笑いながらこう言っていた。
私たちは単なる親友なんかじゃない。
まるで本当の姉妹みたいだ、と。
年月が流れ、私たちの生活は変わっていった。それでも、友情だけは決して変わらないように思えた。
私はダニエルと結婚した。エミリーも別の男性と結婚したが、やがてその結婚生活は破綻してしまった。
彼女が離婚を経験したとき、私は彼女が苦しむすべての瞬間に寄り添った。彼女がこれまで何度も私を支えてくれたのと同じように。
ダニエルもまた、エミリーを家族の一員のように扱っていた。
彼女は私たちの家の合鍵を持ち、日々の生活スケジュールも把握していた。ときには事前に連絡もせず、ふらりと立ち寄ることさえあった。
私は、そんなことを一度も疑問に思わなかった。
どうして疑う必要があっただろう?
彼女はエミリーだったのだから。
世界中のほとんど誰よりも、私が信頼していた人だった。
そんなある日、ダニエルが亡くなった。
彼の死によって、私は打ちのめされた。
人の集まる場所に行かなくなり、電話にも出なくなった。私たちが一緒に暮らしていた家の中で、ひとりきりで過ごす日々が続いた。
そんな私を見捨てようとしなかった数少ない人のひとりが、エミリーだった。
だから彼女から、海辺のリゾートで1週間、ゆっくり過ごさないかと誘われたとき、私はようやくその提案を受け入れた。
何か月ぶりだろう。
私は再び、心から笑えるようになっていた。
一緒に浜辺を歩き、静かな夕食を楽しみ、子どもの頃の思い出を語り合った。
すべてがいつもどおりだった。
あの最後の午後までは。
私たちは屋外に座り、海の上できらきらと輝く日差しを眺めていた。
そのとき、エミリーが突然、私の携帯電話を貸してほしいと言った。
「ねえ、お願い」
彼女は穏やかな声で言った。
「最後に、ふたりで写真を撮りましょう」
私は微笑んだ。

「最後の写真? どうしてそんな大げさな言い方をするの?」
エミリーはサングラスを外した。
数秒間、彼女はただじっと私を見つめていた。
そして、こう答えた。
「だって、これが親友同士として撮る最後の写真になるから」
私は冗談だと思って笑った。
けれど、エミリーは笑わなかった。
それどころか、彼女の手に握られたサングラスが小刻みに震えていることに気づいた。
「エミリー? どうしたの?」
彼女は海のほうへ顔を向けた。
まるで永遠に感じられるほどの時間、何も言わなかった。
やがて、私のほうへ身を寄せ、耳元でささやいた。
「明日、あなたは自分の人生において、私が本当はどんな存在だったのかを知ることになるわ」
背筋に冷たいものが走った。
そして突然、37年間信じ続けてきた女性が、まるで見知らぬ他人のように感じられた。
翌朝、私はいつもより早く目を覚ました。
エミリーはすでに窓際に座り、両手でコーヒーカップを包みながら、海をじっと見つめていた。
まるで一睡もしていないかのように、ひどく疲れた顔をしていた。
私は部屋の入り口に立った。
「昨日、私に何かを話すつもりだったんでしょう?」
彼女はゆっくりとうなずいた。
「ええ」と彼女は答えた。「ただ、どうしても話す勇気が出なかったの」
私の胃がぎゅっと締めつけられた。

「だったら、今すぐ話して」
しばらくの間、私たちはどちらも口を開かなかった。
やがてエミリーはハンドバッグに手を入れ、小さな封筒を取り出した。
そして、それを私たちの間にあるテーブルの上に置いた。
「これを見てほしいの」
中には、何枚かの記録のコピーが入っていた。何年も前の日付が記されたものもあった。
銀行取引明細書。
送金確認書。
そして、私が一目で見覚えのある署名が記された書類。
ダニエルの署名だった。
私は書類を見つめた。
「どうしてあなたが、夫の署名がある書類を持っているの?」
エミリーは唾をのみ込んだ。
「ダニエルが亡くなったあと、私は本来なら見つけるはずのなかったものを見つけてしまったの」
私は困惑しながら彼女を見た。
「何の話をしているの?」
彼女は明細書の一枚を指さした。
「ダニエルは、あなたが存在すら知らなかった口座にお金を移し続けていたの。でも、その口座は彼の名義ではなかった」
私は書類を握る指に力を込めた。
ダニエルと私は、結婚生活の中でほとんどすべてを共有してきた。
少なくとも、私はずっとそう信じていた。
「誰の口座だったの?」
エミリーはすぐには答えなかった。
代わりに、うつむいた。
「それも、私があなたに隠してきたことのひとつなの」
胸の中で怒りが込み上げてきた。
「エミリー、あなたは37年間、私の親友だったのよ。もし夫について何か知っているのなら、私にはそれを知る権利があるわ」
彼女の目に涙が浮かんだ。
「わかっているわ。本当にごめんなさい。こんなに長い間、あなたに黙っていて」
彼女の説明によると、ダニエルはある人物に何度も送金していたという。
しかし、その人物の名前には、私にとってまったく心当たりがなかった。
送金は何年にもわたって続いていた。
私は必死に説明を探しながら、一枚一枚、書類を確認していった。
そして、最後のページにたどり着いた。
そこには住所が記されていた。
私は息をのんだ。
その住所を、私はすぐに思い出した。
ダニエルと私が、今の家に引っ越す前に暮らしていた家の住所だった。
私はまっすぐにエミリーを見つめた。
「どうして、私たちが昔住んでいた家が、この送金と関係しているの?」
彼女の表情が変わった。
まるで、その質問をされることをずっと恐れていたかのようだった。
「それはね……」彼女は静かに言った。
「お金を受け取っていた人物が、その住所に住んでいたからよ」
私は首を横に振った。

「そんなのおかしいわ。あの家には、ダニエルと私が一緒に住んでいたのよ」
エミリーは目元の涙をぬぐった。
そして、私の全身から血の気が引くような言葉を口にした。
「その人物は、あなたがダニエルと出会うずっと前から、あの家に住んでいたのよ」
私は言葉を失い、彼女を見つめた。
その朝まで、私は夫にまつわる秘密があるとしても、それは結婚してから始まったものだと思っていた。
けれど今、私はもっと恐ろしい事実に気づき始めていた。
ダニエルが隠していたことは、私たちが結婚したあとに始まったわけではなかった。
それは、私が結婚式でバージンロードを歩くよりも、ずっと前から始まっていたのだ。
そして、どういうわけか、エミリーはそのことを知りながら、私に隠し続けていた。
37年間、私は親友のことなら、大切なことは何でも知っていると思っていた。
けれど今では、自分自身の結婚生活についてさえ、本当のことを知っているのかどうか、わからなくなっていた。
