長年の孤独を経て、母がまた笑い、身なりを整え、そしてもう一度誰かに恋をした。
それを見れば、私の不安なんて消えていいはずだった。
なのに、リチャードが夕食に来るたび、一つの疑問だけが、日に日に大きくなっていった。
なぜ彼は、いつも夜7時30分になると帰ってしまうの?
母が鼻歌を歌うのを、私は11年間聞いていなかった。
父が亡くなって以来、一度も。
それなのに、ある日曜日の午後。
母は寝室の鏡の前に立ち、父が結婚30周年にプレゼントしてくれた真珠のイヤリングをつけながら、昔のシナトラの曲を小さく口ずさんでいた。
私はドアにもたれ、腕を組みながら、涙が出そうになるのを必死でこらえた。
「お母さん、すごくきれい!」
「もう、やめてよ」
母は笑いながら手を振った。
「ただの夕食でしょ、エイブリー」
「赤いワンピースまで着てる!」
「赤いワンピースを着ちゃいけないなんて、誰も言ってないでしょ」
「最近買ったばかりなのに、私の冬のコートより頻繁に着てるじゃない」
母は声を上げて笑った。
その笑い声があまりにも素敵で、一瞬、私は自分が二階に来た理由を忘れてしまった。
……まあ、正直に言えば。
母の様子を探るためだった。
母は11年間、一人だった。
それなのに今では、まるで誰かが家の明かりをもう一度つけたかのように、生き生きと家の中を歩き回っている。
その理由は、リチャードだった。
52歳。
一人暮らし。
地域のガーデニングクラブで母と出会った。
母が育てていたトマトを褒めたことが、きっかけだったらしい。
一か月もしないうちに、彼は母にひまわりを贈るようになった。
二か月後には、頼まれてもいないのに母の家のポーチの手すりまで直してくれた。
私の15歳の娘クロエがミントチョコレートアイスが大好きだと覚えていて、よく一個買ってきてくれた。
数か月後、母は父が亡くなったときに失ってしまったと思っていた、昔の母のようになっていた。

赤いワンピースを買った。
また香水をつけるようになった。
時々、まるで恋するティーンエイジャーのように、スマホを見ながら微笑んでいた。
私はリチャードを好きになりたかった。
本当にそう思っていた。
「今日は何時に来るの?」
「5時よ。今日も7時30分までには帰らないといけないから、6時には食べ始めましょうね」
私は階段へ向かっていた足を止めた。
「また7時30分?」
「エイブリー」
「何も言ってないけど」
「顔に全部出てるわ」
一階では、クロエが母のお気に入りの食器を並べていた。
お客さんが来るときにしか使わない、あの食器だ。
クロエは母譲りの頬骨と、父親譲りの頑固なあごを持っていた。
そして最近は、リチャードをますます怪しい目で見るようになっていた。
「シンデレラが夕食に来るんだって」
クロエはナプキンを折りながら言った。
ただし、その形は白鳥というより、事故現場の何かに近かった。
「ちゃんとしなさい」
「してるよ。ただ言ってるだけ。あの人、シンデレラみたいなスケジュールで動いてるじゃん」
「クロエ」
「だって本当でしょ!毎週日曜日、夜7時30分になると、バーン!って玄関から出ていく。まるでカボチャが爆発する前に帰らなきゃいけないみたいに」
私は危うくリチャードをかばうところだった。
でも、やめた。
クロエは間違っていなかった。
6か月間、リチャードは毎週日曜日、私たちと夕食を食べていた。
そして一度も、夜7時30分を過ぎて家にいたことがない。
帰るときはいつも礼儀正しかった。
そして毎回、理由があった。
問題は――
その理由が毎週違っていたことだった。
「水のグラスも出して」
「話そらした」
私はクロエをにらんだ。
そのとき母が階段を下りてきて、クロエが小さく口笛を吹いた。
母は照れながらクロエを軽く叩き、口紅が濃すぎないか尋ねた。
全然濃くなかった。
母は去年のクリスマスより、10歳は若く見えた。
リチャードはぴったり午後5時にやって来た。
手にはデイジーの花束。
そしてクロエには、スパークリンググレープジュースを一本。
彼は私と握手し、母の頬にキスをして、クロエに歴史のレポートがどうなったか尋ねた。
客観的に見れば、素晴らしい男性だった。
でも私は知っていた。
7時29分になれば、彼は帰る準備を始める。
リチャードと母がリビングで話している間、クロエがキッチンの向こうから私の目を見た。
そして腕時計を指差した。
「7・3・0」
そう口だけを動かし、片眉を上げた。
私はコンロの方を向き、別にかき混ぜる必要もないグレイビーソースを、ひたすらかき混ぜた。
胸の奥で、不安が少しずつ結び目のように固くなっていった。
⸻
翌週の日曜日。
私はリチャードを注意深く観察していた。
彼は腕時計を何度も確認しながら、見事な手つきでローストを切り分けていた。
「今夜、何か予定でもあるんですか?」
私は彼にジャガイモを渡しながら尋ねた。
「ああ、大したことじゃないよ。シンガポールの顧客と8時に電話なんだ」
クロエのフォークが、口に届く直前で止まった。
「シンガポール?日曜日なのに?」
「市場は眠らないんだよ」
「へえ」
クロエは言った。
「配管工も眠らないみたいですけどね」
私は危うくむせるところだった。
二週間前、リチャードは「夜9時に配管工が家に来る」と言って、急いで帰っていた。
母でさえ、そのときは不思議そうな顔をしていた。
リチャードは笑った。
でも、目元が一瞬だけ固くなった。
次の日曜日。
7時25分には、すでにいつもの革製のトートバッグを腕にかけていた。

その日の理由は、隣人だった。
「メンデスさんが血圧の薬の容器を開けられなくてね。関節炎なんだ。寄ってあげるって約束したんだ」
「まあ、優しいのね」
母が微笑んだ。
「本当に優しいですね」
私はそう付け加えた。
テーブルの下でクロエが私の足を蹴った。
5分後、リチャードは帰っていた。
同じ時間。
同じ革のトートバッグ。
毎週日曜日。
まるで時計のように正確だった。
⸻
食器を洗い終えたあと、私は母をキッチンで呼び止めた。
「お母さん、怒らないで聞いてくれる?」
「だいたい、その言葉で始まる話はろくなことがないのよね」
「半年も付き合ってるのに、一度でも彼の家に入ったことある?キッチンも、ソファも、郵便受けも見た?」
母は蛇口を少し強くひねった。
「彼はプライベートな人なの」
「秘密が多すぎるのよ」
「違うわ」
「違う?クロエが言ってた。二回も、夕食のあと彼の車が南へ向かうのを見たって。彼は北に20分の場所に住んでるって言ってるのに」
母の肩が固くなった。
皿を必要以上に強くシンクへ置く音がした。
「私は彼を信じてるの、エイブリー」
「私も信じたいよ。お母さんには幸せになってほしい。でも、奥さんも子どももいなくて、一人暮らしで、日曜日の夜7時30分にどうしても行かなきゃいけない場所があるって……」
「私がまだ知らなくてもいい理由があるのかもしれないでしょ」
「それが問題なの」
母はようやく私を見た。
怒っているように見えた。
でも、その奥に別の感情があった。
母も気づいていたのだ。
ただ、認めたくなかっただけ。
「お願い」
母は小さな声で言った。
「これを取り上げないで。もし最後に傷つくことになっても……今だけは、まだ希望を持たせて」
私は何も言えなかった。
だから黙って、もう一枚皿を拭いた。
⸻
その後、クロエと私はポーチの階段に座った。
「おばあちゃんも気づいてるよ」
クロエが言った。
「何かがおかしいって。ただ、怖いんだよ」
「クロエ。何を考えてるのか知らないけど、やめなさいよ」
「何も考えてない」
「あなたはいつも何か考えてる。今の顔は完全に“悪いことを考えてる顔”よ」
クロエはかすかに笑った。
「リチャード、他に女がいるんでしょ?」
「分からないわ」
「それか、別の家族がいる。夜しか働かない配管工と一緒に暮らしてる秘密の家族」
「クロエ」
「みんな思ってることを言ってるだけ。おばあちゃんだって思ってるよ。でも口にしたら本当になっちゃうかもしれないから言わないんだ」
私は娘の肩を抱いた。
「来週はおばあちゃんの誕生日よ」
「だから?」
「母親としてお願い。デザートくらいまでは何もしないで。リチャードのことは、そのあと考えましょう」
クロエは少し黙った。
「おばあちゃんが嘘をつかれてるのを見てるの、もう嫌なんだ」
「クロエ」
「私だっておばあちゃんが大好きなの。言いたいのはそれだけ」
クロエは立ち上がると、まるで私が子どもであるかのように私の頭にキスをして、家の中へ戻っていった。
私はポーチに残った。
毎週日曜日、リチャードのテールランプが消えていく道を見ながら。
⸻
翌週は、母の72歳の誕生日だった。
母は廊下の鏡の前で、三回目の髪を直していた。
「すごくきれいだよ」
私は言った。
「頑張りすぎてる女に見えるわ」
ソファからクロエが言った。
「おばあちゃん、ちょうどいいくらい頑張ってる女に見えるよ。違いがあるの」
6時にドアベルが鳴った。
リチャードが立っていた。
12本のバラ。
ラッピングされたプレゼント。
そして腕には、あの革製のトートバッグ。
「誕生日おめでとう、グレース!」
母の顔が一瞬で輝いた。
あんなふうに見つめられると、疑うのが難しかった。
夕食は素晴らしかった。
リチャードは、ガーデニングクラブでズッキーニとキュウリを間違えたという、ばかばかしい話をした。
母は笑いすぎて、思わず鼻を鳴らした。
父が生きていたころ以来、母があんなふうに笑うのを聞いたことがなかった。
そして母がデザートを運んできた。
「チョコレートパイよ」
嬉しそうに母が言った。
「彼氏が大好きだって言ったから、作ったの」
リチャードの表情が変わった。
感謝。
罪悪感。
もしかしたら、その両方。
そして彼は腕時計を見た。
7時26分。
「グレース、本当にごめん。もう行かなくちゃ」
部屋が静まり返った。
母の笑顔がゆっくり消えていった。
「10分だけでもダメ?今日は私の誕生日よ」
「本当に行かなきゃいけないんだ。ごめん」
リチャードは母の頬にキスをした。
トートバッグを持ち上げると、誰も止める間もなく家を出ていった。
チョコレートパイは、テーブルの中央に手つかずで残っていた。
母はゆっくり椅子に腰を下ろした。
フォークを手に取った。
そして、また置いた。
「お母さん、大丈夫?」
「大丈夫よ」
大丈夫ではなかった。
私たちは二人とも分かっていた。
クロエはリチャードが消えた窓の外を見つめていた。
そして突然、立ち上がった。
「ちょっと出てくる。すぐ戻るから」
「クロエ、待って。もう暗いわよ」
「大丈夫」
私が止める間もなく、ドアが閉まった。
私はドアを見た。
それから母を見た。
そして、手つかずのバースデーパイを見た。
「まあ」
母が乾いた笑いを浮かべた。
「誕生日の終わり方としては、なかなかね」
「リチャードはバカよ」
「エイブリー」
「バカよ!何を隠してるにしても、今日隠すなんてバカすぎる!」
私は手を忙しくしていたくて、食器を片づけ始めた。
10分。
15分。
20分。
窓の外を見た。
何もない。
「電話した方がいいかな?」
母が顔を上げた。
「もう少し待ってみましょう。気持ちを整理したかったのかも。すぐ戻るわ」
私はキッチンとリビングを行ったり来たりした。
クロエが出て行くとき、あの顔をしていた。
一週間は説教することになる、あの顔だ。
40分近く経ったころ。
ポーチを駆け上がる足音がした。
玄関のドアが勢いよく開いた。
クロエが立っていた。
息を切らし、頬には涙が流れていた。
そして胸に、何かを強く抱きしめていた。
リチャードの革製のトートバッグ。
「クロエ?」
私を見ようとしなかった。
「どこでそれを手に入れたの?」
クロエは首を振った。
「どうやって手に入れたかは聞かないで」
声が震えていた。
「これの中に、彼が何を隠していたのか見て。どうして彼が毎週7時30分を過ぎると絶対にいられないのかも」
クロエはバッグをダイニングルームへ運び、バースデーパイの横に置いた。
母がゆっくり立ち上がった。
「どこでそれを……?」
「クロエ、何が入ってるにしても、私たちは少し冷静に――」
「おばあちゃん、見て」
クロエはバッグを開けた。
母の手が震えながら、中へ伸びた。
私は近づいた。
疑い深い娘なら、誰でも想像するものを予想していた。
口紅。
ホテルのレシート。
別の女性の写真。
何か、醜い秘密。
でも。
母の手が口元を覆った。
「まあ……」
中には、古い家族写真が入っていた。
端がすり切れている。
色あせた小さな木製のオルゴール。
そして、普通の物の写真の横に大きな文字が書かれたラミネートカード。
スプーン。
くし。
そして笑顔の男性の写真。
そこには「息子」と書かれていた。
一番上には、手書きのカードがあった。
「私の名前はエヴリン。リチャードは私の息子。私は彼と一緒にいて安全です」
クロエは手の甲で涙を拭った。
「おばあちゃん。それだけじゃない。私、彼がこれをどこへ持って行くのか見た」
そして早口で話し始めた。

「親友のお姉ちゃん、シンディに外で待っててもらって、リチャードの車を追いかけたの。彼は南に向かって、認知症ケア施設に行った。バッグを助手席に置いて、中へ走っていった。車のドアは鍵もかかってなかった」
私の顔を見て、クロエは慌てて付け加えた。
「ちゃんと返すつもりだよ、絶対に。施設の人が彼を中に入れてた。まるで、いつもそこにいるみたいに」
クロエの声が震えた。
「そこに簡易ベッドがあったの。病院のベッドの横に、折りたたみ式のベッドが」
グレースはラミネートカードを胸に抱いた。
「エヴリン……」
小さくつぶやいた。
「彼のお母さんのこと、前に少しだけ話していたわ。でも、それ以上は……」
母はコートをつかんだ。
「エイブリー、車を出して。今すぐ。シートベルトのことは説教しないで。ちゃんとするから」
⸻
私たちは認知症ケア施設の小さな部屋で、リチャードを見つけた。
彼は小柄な年配の女性の隣に座り、手を握りながら、ゆっくりと写真カードを読んでいた。
私たちを見ると、リチャードの顔から一気に血の気が引いた。
「グレース、お願いだ。話すつもりだったんだ」
彼は立ち上がった。
「前の恋人は、これを知って僕のもとを去った。だから……怖かった。本当にごめん」
母は彼の横を通り過ぎ、ベッドのそばに座った。
リチャードはうつむいた。
「母は86歳で、認知症なんだ。夜になると特にひどくなる。場所も時間も分からなくなって……僕がそばにいるときだけ、落ち着くんだ」
彼の声が震えた。
「何か月も、僕はここで寝てる。だから……君たちが僕の家を見たことがないのも、そのせいなんだ。正直、家なんて呼べるような場所にほとんど帰っていない」
何か月も疑い続けた答えは。
私たちが一度も考えなかったほど、優しいものだった。
母はリチャードを見た。
「リチャード」
彼が顔を上げた。
「お母さんの世話をすることと、私を愛すること。そのどちらかを選ぶ必要なんてないのよ」
エヴリンがグレースの方を向いた。
じっと顔を見つめる。
「あなたが……うちのリチャードがいつも話してる、きれいな女性?」
母は涙を流しながら笑った。
「ええ。たぶん、私のことよ」
⸻
数週間後。
日曜日の夕食は、午後5時からになった。
エヴリンの体調がいい日には、リチャードが彼女も連れてきた。
クロエは、あの「借りた」革製トートバッグの件を今でも恥ずかしがっていた。
そのお詫びとして、自分から写真カードの管理係を名乗り出た。
母はエヴリンの古いオルゴールを直すことができた。
私が食卓を整えている間、優しいメロディーが部屋に流れていた。
私はずっと、リチャードが嘘をついていると確信していた。
そして、技術的に言えば。
彼は嘘をついていた。
でも彼が隠していたのは、別の女性ではなかった。
彼は、母が必要としているのと同じくらい、自分の愛を必要としているたった一人の大切な人の物語を守っていたのだ。
そして私はそのとき初めて、すべての秘密が裏切りから生まれるわけではないのだと知った。
