編み物のベビーシューズを見れば、アンドリューは笑顔になるはずだった。
ところが、娘の夫であり医師でもある彼は、娘が生まれてくる赤ちゃんの名前を提案した瞬間、顔から血の気が引いた。
夕食が終わる前に、彼は私をそっと呼び止め、アマンダと初めて会ったときから、彼女の古い医療記録にあった一枚のページがずっと心に引っかかっていたのだと打ち明けた。
「ママ、もう帰って休んで。そんな椅子に座っていたら、腰が痛くなるよ」
アマンダは14歳だった。2台の医療機器につながれ、体を起こして座ることさえ、やっとの状態だった。
それなのに、彼女は私の腰を心配していた。
「大丈夫よ、かわいい子。ママは平気だから」
「嘘をつくとき、いつもそんな顔をするの」
「どんな顔?」
「その顔よ」
彼女は、わずかに残った力を振り絞って私を指さした。
私は彼女を安心させるために笑った。そして、彼女が眠りにつくのを待ってから、ようやく声を殺して泣いた。
⸻
アマンダは幼い頃から、深刻な病気と闘ってきた。
20歳になるまでに、彼女は自宅よりも病院で多くの誕生日を迎えていた。
夫のロビンと私は、何かを待つことに慣れてしまっていた。
検査結果を待つこと。
薬が効き始めるのを待つこと。
医師たちが「懸念される状態です」という言葉を使わなくなるのを待つこと。
そして、ついに私たちは、すべての親が恐れる言葉を聞かされた。
これ以上、できることはほとんどありません。
その後、私たちはアマンダと同じような病気を抱える患者に、新しい治療法を試している病院の存在を知った。
そこで、アンドリューと出会った。
彼はアマンダの専門医療チームの一員だった。
初めて彼を見たとき、彼はアマンダのベッドの横に立ち、彼女のカルテをじっと見つめていた。
彼はあるページで手を止めた。
しばらく黙ってそのページを見つめたあと、カルテを閉じ、アマンダのほうへ向き直った。

「今日はどんな具合?」
「バスにひかれたみたい。でも、そのバスはずいぶん計画的にひいたみたいね」
アンドリューは笑った。
彼は痛みの程度や、何をすると悪化するのか、どれくらい食事ができたのかを尋ねた。
そして、思いがけない質問をした。
「もし体調がよくなったら、何をしたい?」
アマンダは目をぱちくりさせた。
「医学的な話?」
「何でもいいんだよ」とアンドリューは答えた。
彼女は少し考えた。
「座らずに踊りたい」
アンドリューはうなずいた。
「わかった」
彼は約束をしたわけではなかった。
私はそれがありがたかった。
アマンダはすでに、恐怖に駆られた大人たちから、あまりにも多くの約束を聞かされていたからだ。
彼女の回復はゆっくりと進んだ。
ある朝、目覚めたら突然すっかり健康になっていた、というような奇跡は起きなかった。
それでも、少しずつ、彼女はよくなっていった。
食べられる量が増え、以前より長い距離を歩けるようになり、常に誰かの助けを借りなくても立っていられるようになった。
初めて、病院の廊下の端まで歩いて戻ってきても休憩を必要としなかった日、ロビンは同じ病棟で働く人たちのほとんど全員にカップケーキを買ってきた。
アマンダを救ったのは、アンドリュー一人の力ではなかった。
医療チーム全体が治療に取り組み、ようやく彼女の体が反応できる治療法に出会えたのだ。
それでも、アンドリューはアマンダにとって大切な存在になっていった。
そして、アマンダもまた、彼にとって特別な存在になった。
二人の間に何かが芽生えていることに、アマンダ自身が気づくより先に、私は気づいていた。
やがてアンドリューは、アマンダの直接の担当から外れ、別の医師が彼女の治療を引き継いだ。
アマンダはその後3日間、ずっと文句を言い続けた。
「私を見捨てたのよ」
「担当医が変わっただけでしょう」と私は言った。
「同じことよ」
でも、実際には違った。
それからずっと後のこと。
別の医師のもとでアマンダの病状が安定した状態を保っていたある日、彼女は病院の外で偶然アンドリューと再会した。
二人はコーヒーを飲みに行った。
それが夕食につながり、やがてデートを重ねるようになった。
そして、恋人同士になった。
アマンダが初めて、彼を愛していると打ち明けてくれたとき、私はどうしても聞かずにはいられない質問をした。
「本当にそう思っているの? あのときのことがあるからじゃない?」
アマンダはすぐに私の言いたいことを理解した。
「ママ、仕事をしたからって、恋愛の特別ボーナスがもらえるわけじゃないのよ」
「それならいいわ」
「彼が恋愛ポイントを稼いだのは、レストランが忘れたフライドポテトを、わざわざ買って持ってきてくれたからよ」
「ずいぶん低いハードルね」
「でも、すごくおいしかったのよ、ママ」
⸻
二人は1年後に結婚した。
披露宴で、アマンダは最初の曲に合わせて踊った。
そして2曲目も。
さらに3曲目も。
私はロビンの隣で、アンドリューが腕を高く掲げ、その下でアマンダをくるりと回す姿を見つめていた。
「3曲だ」とロビンがささやいた。
「数えられるわよ」
「一度も座っていない」
私は言葉を失った。
部屋の向こう側で、アンドリューが私と目を合わせた。
彼もまた、アマンダの願いを覚えていたのだ。
⸻
結婚して1年近くが経った頃、アマンダとアンドリューが日曜日の夕食にやって来た。
アマンダは小さなギフトバッグを持っていた。
「私へのプレゼント?」と尋ねた。
「厳密に言えばね」
中には、毛糸で編まれた小さなベビーシューズが一足入っていた。
片方が、もう片方より少しだけ大きかった。
私はただ、それを見つめることしかできなかった。
アマンダは満面の笑みを浮かべた。
「おばあちゃん、これからの週末は何日か空けておいてね」
私は椅子をひっくり返しそうな勢いで彼女に駆け寄った。
「妊娠したの?」
「11週よ」
私は彼女を抱きしめ、ロビンも私たち二人を包み込むように腕を回した。
キッチンは、喜びに満ちた声と涙、そして笑い声でいっぱいになった。
私は出産予定日や赤ちゃんの部屋の家具について、次々と質問していた。
そのとき、アマンダが話題を変えた。
そして、こう言った。
「男の子だったら、名前について話し合っているの」
その瞬間、アンドリューが凍りついた。
私がそれに気づいたのは、ほかの全員がまだ普通に動いていたからだ。

アマンダは小さなベビーシューズを片方持ち上げた。
「私、トーマスって名前がいいと思うの」
アンドリューのフォークが、かすかに皿に触れて音を立てた。
「お父さんの名前よ」とアマンダは彼に言った。
彼は彼女を見つめた。
「そうかもしれないね」
彼の声には、何か違和感があった。
アマンダは気づかなかったが、私は気づいた。
アンドリューは何も食べていなかった。
ナプキンを握りしめ、指先で布をねじっていた。
「アンドリュー?」
彼は私のほうを向いた。
「大丈夫?」
「ちょっと圧倒されているだけだよ、クリスティー」
彼は笑おうとしたが、その笑顔はすぐに消えた。
アマンダがこれまで耐えてきたことを思えば、彼が感情を抑えきれなくなるのも理解できた。
でも、私は恐怖がどんなものか知っていた。
そして、アンドリューは怯えていた。
⸻
その後、アマンダとロビンはリビングで、赤ちゃんが歩く前から靴を履く必要があるのかどうか、冗談交じりに言い争っていた。
私は食器を集め、キッチンへ運んだ。
アンドリューも後からついてきて、シンクのそばにグラスを二つ置いた。
そして、私の手首をつかんだ。
優しかったが、私を立ち止まらせるには十分な強さだった。
「クリスティー」
「何?」
「話があるんだ」
彼はリビングのほうを見た。
「誰にも聞かれたくない」
手にしていた皿が、突然ずっしりと重く感じられた。
「アマンダの病気が再発したの?」
「違う」
「アンドリュー、私に気を遣わないで。アマンダの容体が悪化しているの?」
「違うよ。彼女の病状は安定している」
「赤ちゃんに何か問題があるの?」
「神様……違う」
「じゃあ、何なの?」
彼は私を廊下へと連れていった。
顎が震えていた。
「何年も前に、話しておくべきだった」
「何を? アンドリュー、私の目を見て」
「僕は、あなたの娘にひどい真実を隠してきた」と彼はささやいた。「そして今、アマンダが取り返しのつかない間違いを犯すのを、黙って見ているわけにはいかないんだ」
私は彼を見つめた。
何を言っているのか、理解できなかった。
「間違いって何?」
彼はダイニングルームのほうに目を向けた。
小さなベビーシューズは、まだ私の皿の隣に置かれていた。
「トーマスだよ」
「トーマス?」
「名前のことだ」
「それがどうしたの?」
アンドリューは両手で顔を覆い、ゆっくりと下ろした。
「アマンダと出会ってから起きたことの話じゃないんだ」
彼は声を落とした。
「彼女が7歳だった頃の話だ」
一瞬、息ができなくなった。
7歳。
あの頃のことは、今でも鮮明に覚えている。
繰り返す高熱。
絶え間ない疲労。
そして、脚が痛いと泣くアマンダと過ごした夜。
最初に診てもらった医師は、子どもには時折、説明のつかない体調の変化があるものだと言っていた。
「アマンダを連れて行った、あの医師を覚えている?」
「もちろんよ」
診察室の光景は、今でも目に浮かぶ。
水槽。
そして、診察した限りでは、慌てるようなことは何もないという、彼の落ち着いた説明。
診察を終えたあと、ロビンが私の手を握りながら言った言葉も覚えている。
「先生の言うとおりかもしれない。僕たちが必要以上に心配しているだけなのかもしれない」
アンドリューは目を伏せた。
「彼の名前は、トーマスだった」
私は信じられない思いで彼を見つめた。
アンドリューは母親の姓を名乗っていた。
13年前に私たちが受診した医師と、彼がつながっているなどと考える理由は、これまで一度もなかった。
「そんなはずないわ」
「クリスティー」
「嘘でしょう」
「彼は僕の父だった」
アンドリューはそう明かした。
数秒間、隣の部屋から聞こえるアマンダの笑い声以外、何も耳に入らなかった。
ようやく、私は声を絞り出した。
「あなたのお父さんが、私の娘を診察したの?」
「そうだよ」
「アマンダは深刻な病気じゃないと言った、あの医師が?」
アンドリューはうなずいた。
「あなたは知っていたの?」
「知っていた」
「いつから?」
彼は私の目を見た。
「初めてアマンダの病室に入る前から」
私は廊下のテーブルを手のひらでたたいた。
その衝撃で、上に置かれていた額入りの写真がずれた。
「会う前から知っていたの?」
「彼女のカルテを確認していたんだ。父の名前と日付を見て、すぐに気づいた。あの患者のことだとわかったんだ」
「患者のこと?」
「父は、そういう言い方をしていた」
怒りが声ににじんだ。
「私の娘は、ただの患者の記録じゃないわ!」
「わかっている」
「父親のことがあったから、アマンダを担当したの?」
彼はためらうことなく答えた。
「違う。僕はもともと医療チームに配属されていた。彼女の過去の記録を確認するまで、アマンダがあのときの患者だとは知らなかったんだ」
「あなたのお父さんは、具体的に何をしたの?」
アンドリューは、もう一度リビングのほうを確認した。
「ここでは話せない」
「あなたが私をここに連れてきたのよ」
「父がアマンダの病気を引き起こしたわけじゃない」
「そんなことは聞いていないわ」
彼は額に指先を押し当てた。
「アマンダが7歳だった頃、父は、いくつかの原因が考えられる症状を診ていた。そのとき、もっと慎重に経過を追うべき所見もあったんだ」
「でも、そうしなかった」
「そうだ」
「心配しなくていいと言ったのね」
「そうだよ」
「それで、私たちは大切な時間を失った」
アンドリューは唾を飲み込んだ。
「そうだ」
私はテーブルの端を強く握った。
「どれくらいの時間を?」
「はっきりした数字では答えられない。彼女の病状は複雑だった。もっと早く診断されていれば、その後の年月がどうなっていたか、誰にも断言できないんだ」
少なくとも、彼は自分にわからないことを、わかるふりはしなかった。
「でも、あなたのお父さんは、自分が間違いを犯したと思っていたのね」
アンドリューはうなずいた。
「どうしてそうわかるの?」
「何年もの間、そのことを口にしていたからだよ」
私は彼から離れた。
アマンダのベッドのそばで過ごした、あの無数の夜。
そのすべてが、今まで一度も尋ねたことのなかった疑問と突然結びついたように感じた。
でも、それは確かな説明ではなかった。
あくまで、ひとつの可能性にすぎなかった。
「アマンダは、彼の名前を知っていたの?」
「彼女は7歳だったんだ」
「そういうことを聞いているんじゃないわ」
「知らないよ。彼女は父のことを覚えていない」
「でも、あなたは彼女の代わりに覚えていたのね」
アンドリューは黙っていた。
「どうしてカルテを見たときに、私たちに話さなかったの?」
「最初は、彼女の治療に何の役にも立たないと思ったんだ。父はもう亡くなっていたし、アマンダはすでに十分すぎるほど苦しんでいたから」
「最初は?」
彼は私と目を合わせた。
そこが、まさに問題だった。
最初の段階なら、彼の判断を理解できたかもしれない。
でも、アマンダは回復した。
アンドリューは彼女の担当を離れた。
二人は再会した。
彼は彼女をデートに誘った。
二人は恋に落ちた。
彼はプロポーズした。
そして、結婚した。
二人の関係が一歩進むたびに、「最初は」という彼の言い訳は、ますます受け入れがたいものになっていった。
「最初のデートの前に話すつもりだったんだ」と、彼は認めた。
「でも、話さなかった」
「そうだ」
「プロポーズする前は?」
「話すつもりだった」
「でも、話さなかった」
「……そうだ」
「結婚式の前は?」
彼は目を閉じた。
「そうだよ」
私は、さっきずらしてしまった額入りの写真を元の位置に戻した。
「どうして?」
「先延ばしにするたびに、話すことがどんどん難しくなっていったんだ」
「それは答えになっていないわ、アンドリュー」
「彼女に、僕を見て父の姿を重ねてほしくなかったんだ」
「それで?」
「それに、僕は彼女を愛している」
「だからといって、何も変わらないわ」
「わかっている」
リビングからアマンダの声が聞こえてきた。
「ママ、パパが新生児に靴下はいらないって言ってるの。文明社会というものを説明してあげて!」
私たちは二人とも返事をしなかった。
アマンダが再び笑った。
アンドリューは、その声が聞こえた方向を見た。
「まだ話があるんだ」
「もういいわ」
彼は再び私に向き直った。
「何?」
「都合のいい説明から始めるのはやめてちょうだい」
「都合のいい話なんかじゃない」
「あなたのお父さんがその後どうしたかは関係ない。まずはアマンダの話をして」
彼は私の言いたいことを理解した。
「どうして今夜なの?」と私は尋ねた。「デートも、結婚も、娘の隣で目覚める毎日も、すべて乗り越えてきたのに。どうして今夜になって、突然、耐えられなくなったの?」
アンドリューの視線は、小さなベビーシューズに戻った。
「彼女が、赤ちゃんに父の名前をつけたいと言ったからだよ」
それが理由だった。
新しい診断結果でもなければ、アマンダの病気の再発でもない。
赤ちゃんの名前だった。
「彼女にそんな名前をつけさせるわけにはいかないんだ、クリスティー」
その言い方が、私の心に引っかかった。
そして、ようやく気づいた。
「あなたが、彼女に許さない?」
アンドリューは驚いたような顔をした。
「クリスティー、もし父が何をしたか知ったら……」
「だったら、話しなさい」
「彼女はその名前を嫌うかもしれない。父を憎むかもしれない。僕のことだって……」
「そうなるかもしれないわね」
彼の目に涙が浮かんだ。
「でも、あなたには彼女がその名前を使えないと決める権利もないのよ」
彼は黙り込んだ。
私はリビングのほうを指さした。
「あなたがアマンダに話すの」
アンドリューは頬をぬぐった。
「もし、これですべてが変わってしまったら?」
「変わるかもしれないわ」
「僕は彼女に、これが何を意味するのか、どう説明すればいいんだろう?」
「何も説明しなくていいの」
彼は困惑したように私を見た。
「それが何を意味するのかは、アマンダ自身が決めることよ」
隣の部屋から、アマンダが彼を呼んだ。
彼は最後にもう一度、私の目を見つめた。
それから、彼女のもとへ歩いていった。
私もその後を追った。
⸻
アマンダは、すぐに何かがおかしいと察した。
「何があったの?」
アンドリューは彼女の向かいに座った。
「もう一度、赤ちゃんの話をする前に、君に話しておかなければならないことがあるんだ。本当は、最初のデートの前に話すべきだった」
「そうなの?」
アマンダは眉をひそめた。
「夫からそんなことを言われて、喜ぶ人はいないと思うけど」
アンドリューは話し始めた。
自分の父親のこと。
必要な経過観察が行われなかったこと。
そして、失われたかもしれない時間について。
最後に、彼は告白した。
初めてアマンダの病室に入る前から、彼女の病歴に気づいていたのだと。
アマンダは立ち上がり、一人で外へ出ていった。
私たちは誰も追いかけなかった。
しばらくして、ドアが開いた。
「ママ?」
私は彼女の隣に立つため、ポーチへ出た。
彼女は庭の向こうを見つめていた。
「私って、研究対象だったのかな?」
「それは、彼にしか答えられないことよ、かわいい子」
「ママはどう思う?」
「彼はあなたを愛していると思うわ」
アマンダは私のほうを向いた。
「でも、あなたを愛しているからといって、あなたが何を受け止められるかを勝手に決めていいわけじゃない」
アマンダは小さくうなずいた。
そして、ロビンと話したいと言った。

私が、あの頃に起きたことを説明すると、ロビンは椅子に沈み込んだ。
「あの医師は、私たちが心配しすぎだと言ったんだ」
「覚えているわ」
「僕は、彼の言うとおりかもしれないと君に言った」
「あなたは医師を信じようとしていたのよ」
「僕は父親だったんだ」
その後、ロビンはアンドリューと向き合った。
「お父さんは、私たちがもっと早く再診に来なかったことを責めていたのか?」
「一度もありません」
アンドリューは少し間を置いてから続けた。
「父は、自分のせいで、あなたたちにもう心配する必要はないと思わせてしまったことを悔やんでいました」
ロビンは顔を背けた。
⸻
その日の夜、アマンダはようやくアンドリューに隣へ座るよう促した。
「病院で私を見たとき、あなたには誰が見えていたの?」
「最初は、父が決して忘れることのできなかった少女だった」
アマンダの顔が、目に見えてこわばった。
「それからは?」
アンドリューは答えを慎重に選んだ。
「朝、君が体を起こすことさえつらいのに、お母さんの椅子がもっといいものであるべきだって、10分も言い続けていたときかな」
アマンダは、思わず笑みをこぼした。
「その後は、君はアマンダだった」
彼女は彼の目をじっと見つめた。
「あなたが私を愛していることは信じている。でも、これを隠していい権利があなたにあったとは思わない」
「そのとおりだ」
アンドリューは、父親が後年、原因が解明されていない小児患者の症例について、追加の検討を行うよう働きかけていたことも話した。
「あなたのお父さんは、いい医師だったの?」
アマンダが尋ねた。
「いい医師だったこともある」
「ひどい答えね」
「でも、僕が信じられるのは、この答えだけなんだ」
アマンダは、編み物のベビーシューズに目を向けた。
「それで、名前は?」
アンドリューは口を開きかけたが、思い直した。
「君がどうしたいのか、僕にはわからない」
「それでいいの」
彼女は片方のベビーシューズにそっと触れた。
「私にも、まだわからないから」
「僕に何をしてほしい?」
「時間がほしい」
「わかった」
⸻
ずっと後になって、アンドリューは残っていた食器を片づけ始めた。
ベビーシューズに手を伸ばしたところで、彼はためらった。
「これは、どこに置いておけばいい?」
アマンダは窓辺を指さした。
「そこに置いて」
彼は言われたとおり、慎重にベビーシューズを置いた。
片方が、横向きに倒れた。
アンドリューは反射的に手を伸ばし、直そうとした。
しかし、途中で動きを止めた。
アマンダは、その様子に気づいた。
彼は手を引っ込め、再び腰を下ろした。
