貯金して買った緑のドレスは、まだクレアの寝室に置かれていた。そのとき、僕のスマートフォンが彼女のソファの下へ滑り込んだ。
クッションと肘掛けの狭い隙間に手を伸ばし、何かを引っ張り出した。
そこに写っていたのは、八歳の頃の僕自身だった。
そして僕は、クレアの筆跡で書かれたメモに気づいた。
日付は、僕たちがTinderでマッチした、まさにその日。
その瞬間、僕は悟った。
クレアは、僕が彼女について何も知らなかった頃から、僕が誰なのかを知っていたのだ。
僕が買ってあげた緑のドレスに着替えるため、クレアが寝室へ行っている間に、僕のスマートフォンはソファのクッションと肘掛けの間に落ちてしまった。
僕は母の前では絶対に口にできないような悪態を小さく呟き、隙間に手を突っ込んだ。
指先が触れたのは、25セント硬貨が二枚、ペンのキャップ、そして不気味なくらい化石化したポテトチップスのようなもの。
そして最後に、スマートフォンに触れた。
けれど手を引き抜いたとき、写真まで一緒に出てきた。
写真はラグの上に裏向きで落ちた。
僕は何気なく拾い上げた。
そして、動きを止めた。
写真はかなり古く、端のほうは色が薄くなり始めていた。
何人もの子どもたちが、図書館らしき場所の床に座り、それぞれ本を持っている。
列の端近くに、一人の痩せた少年がいた。
ぼさぼさの茶色い髪。
前歯が一本抜けている。
僕だった。
八歳か、九歳くらい。
すぐに分かった。
あの最悪な縞模様のシャツを覚えていたからだ。
母は、あれを着ると僕が「ハンサムに見える」と言い張っていた。
僕は子どもの頃の写真を、クレアに一度も渡したことがない。
僕の隣には、同じくらいの年齢の女の子が立っていた。
紫色の眼鏡をかけている。
僕は写真を裏返した。
薄くなった青いインクで、こう書かれていた。

「ノラ+イーサン、夏の読書クラブ」
その下には、もっと新しい黒いインクで五つの言葉。
「今日、イーサンを見つけた。彼に伝えて」
その下に日付があった。
僕は二度確認した。
僕とクレアがTinderでマッチした日だった。
暖かいはずのクレアの部屋にいるのに、腕を冷たいものが這い上がってきた。
「イーサン?」
寝室から彼女の声がした。
僕は筆跡を見つめ続けた。
数秒後、クレアがリビングに入ってきた。
ドレスは、僕が願っていた通り、彼女にぴったりだった。
エメラルドグリーン。
彼女がいない間にブティックへ戻って買ったとき、まさにこんな姿を想像していた。
黒い髪は片方の耳の後ろでゆるくまとめられ、反対側のイヤリングをまだ留めている途中だった。
一瞬、彼女は微笑んだ。
だが、その目が写真を捉えた。
イヤリングに触れていた指が止まった。
最後まで留めることはなかった。
「それ、どこで見つけたの?」
僕は思わず笑いそうになった。
「君のソファ」
クレアは何も答えなかった。
僕は写真を持ち上げた。
「ノラって誰?」
彼女の手がゆっくり下がった。
「イーサン……」
「いや」
僕は日付を指差した。
「僕たちが出会った日に、どうしてこれを書いた?」
彼女はソファのほうを見た。
まるで、そこに別の説明が転がっているかもしれないとでもいうように。
そして、ようやく口を開いた。
「あなたが誰なのか、知っていたから」
僕は彼女を見つめた。
「Tinderで会う前から?」
「そう」
「どうして?」
クレアは答えず、写真を見つめた。
僕はメモを読み上げた。
「『今日、イーサンを見つけた。彼に伝えて』。何を僕に伝えるつもりだった?」
彼女はダイニングチェアの背もたれに手を伸ばしたが、座らなかった。
「ノラは私の妹だったの」
僕はもう一度、写真の中の少女を見た。
記憶の端で、何かが動いた。
紫色の眼鏡。
笑い声。
二人の膝の上に広げられた一冊の本。
でも、どの映像も掴もうとした瞬間に消えていった。
「妹?」
「異母妹。私よりずっと年下だった」
「どうして僕が彼女と一緒に写ってる?」
クレアはようやく僕をまっすぐ見た。
「あなたたち、友達だったから」
その答えで、すべてが明らかになるはずだった。
なのに、逆に何もかもが分からなくなった。
僕は半年間、クレアと僕がどうやって互いの人生に入り込んだのかを、完全に理解しているつもりだった。
僕は25歳。
出会い系アプリを使うこと自体、もうやめようかと思っていた。
クレアは45歳だった。
最初に彼女から届いたメッセージを見た瞬間から、何かが違っていた。
率直で、面白くて、自分が何を望んでいるのかを完全に分かっている人だった。
20歳という年齢差には少し躊躇した。
でも、それほど長くは迷わなかった。
初めてのコーヒーは、ほぼ4時間続いた。
彼女は僕がコーヒーにシナモンを入れるのが嫌いなことを覚えていた。
僕は、彼女が旅行するたびに趣味の悪い冷蔵庫マグネットを買うことを覚えていた。
3回目のデートまでには、彼女は僕の上司の名前、行きつけのピザ店、そして僕の手首の傷跡がどうしてできたのかまで知っていた。
クレアといると、彼女が何を意味しているのか考え続ける必要なんてなかった。
ただ一つ、僕が間違っていたのは――彼女が僕の人生に入ってきた理由だった。
「つまり、ノラが理由で僕とマッチしたんだ」
クレアは質問を避けようとはしなかった。
「最初は、そう」
僕は写真をコーヒーテーブルに置いた。
「……すごいな」
「イーサン、あなたと付き合うために騙そうとしたわけじゃない」
「子どもの頃の僕を見つけて、何も言わなかったじゃないか」
「分かってる」
「僕が誰なのか知ったうえで、あのコーヒーに来た」
「そう」
「僕は何も知らなかった」
クレアは一瞬目を閉じた。
「そう。あの日に話すつもりだった」
僕はもう一度写真を手に取り、新しいほうの筆跡を指で叩いた。
「僕と会う前に、これを書いたんだろ」
僕はもう一度日付を見た。
「本当に僕に話すつもりだった? これ、どこで撮った?」
「昔のパイン・ストリート図書館」
僕は眉をひそめた。
「あそこ、何年も前に大改装されたんじゃなかった?」
「子ども向けの部屋はまだ残ってる。その周りを改築したの」
その瞬間、記憶の小さな断片が戻ってきた。
低い本棚。
ビーズクッション。
天井タイルから斜めにぶら下がっていた紙の太陽。
埃っぽいカーペットの匂いまで、ほとんど感じられそうだった。
そして、もう一つの記憶が浮かんだ。

黄色。
僕は写真を凝視した。
「彼女の眼鏡、黄色だった」
クレアが瞬きをした。
「何?」
「ノラの眼鏡。黄色だった」
クレアは写真を見下ろした。
「紫よ」
「違う」
僕は言った。
「黄色だった」
彼女はしばらく僕を見つめた。
それから笑った。
「彼女、自分で塗ったの」
「何を?」
「黄色のマニキュアで。母は本気で怒ってたわ」
その瞬間、記憶があまりにも突然よみがえり、僕は椅子に座り込まなければならなかった。
黄色い分厚い眼鏡をかけた女の子が、あまりにも顔に近づけてペーパーバックを読んでいる。
その本が何だったのかは、まだ思い出せなかった。
でも、彼女に腹を立てていたことだけは覚えていた。
「行ってみる?」
クレアが尋ねた。
僕は顔を上げた。
彼女はすぐに、自分が何を言ったのか気づいた。
「ごめん。聞き方を間違えた」
しばらく沈黙があった。
そして、彼女は言い直した。
「写真がどこから来たのか知りたいなら、ここで話す。私が案内してもいい。あるいは、私が出ていくこともできる」
その夜、彼女が言った言葉の中で、それだけが唯一、僕のために何が一番いいかを、彼女がすでに決めつけていないように聞こえた。
僕はジャケットを手に取った。
「図書館に連れて行って」
クレアはそれ以上何も言わず、緑のドレスから着替えた。
20分後、僕たちはパイン・ストリート図書館の蛍光灯の下に立っていた。
大人向けの書架は、僕にはまったく見覚えがなかった。
でも、子ども向けの部屋は違った。
記憶より小さかった。
ずっと小さかった。
僕はゆっくりと本棚の間を歩き、奥の角まで行った。
「昔、ここに青いラグがあった」
クレアが指差した。
「そこ」
今は灰色だった。
僕は小さな椅子に腰を下ろし、子ども用の小さなテーブルに座った。
膝が机の下にほとんど入らない。
クレアは入口の近くに立ったままだった。
僕は部屋を見回した。
すると、冒険小説の本が並んだ展示が目に入った。
また一つ、記憶が戻ってきた。
ノラが本をバタンと閉じる。
僕が、彼女は3ページ飛ばして読んだと責める。
彼女は、僕がただ読むのが遅いだけだと言う。
気づかないうちに笑っていた。
クレアは、何がおかしいのか聞かなかった。
「彼女、ズルしてた」
僕が言った。
「ああ、いつもね」
「先を読んでた」
「それも、いつも」
「僕、それが嫌だった」
「彼女も知ってた」
僕はクレアを見た。
彼女は微笑んでいた。
でも、その笑顔は僕に向けられたものではなかった。
そこには、もうこの世にいない誰かを思う人の表情があった。
それが、なぜかとても痛かった。
「病気だったの?」
僕が尋ねた。
クレアは一瞬、入口のほうを見てから答えた。
「ええ」
そこにあった。
彼女がこの半年間、僕に向かって抱えていた真実。
「どのくらい?」
「子どもの頃から慢性的な病気を抱えていたの。その夏は、比較的状態が良かった時期だった」
「だからここに来てた?」
「来られる週は毎週ね」
クレアは僕のほうへ近づいたが、テーブルの反対側で止まった。
「彼女は、自分の名前を聞かれる前に病気のことを聞かれるのが大嫌いだった」
僕は隣の空いた椅子を見た。
「知らなかった」
「だから、あなたのことが好きだったの」
僕は鋭くクレアを見た。
「僕を聖人みたいな八歳児にしないでくれ」
クレアは少し笑った。
「そんな子じゃなかったわ。あなた、ノラがUNOでズルしたって言って、一度彼女を泣かせたのよ」
「本当にズルしてた?」
「もちろん」
僕は思わず笑った。
それは、たった2秒ほどだった。
そして、避け続けていた質問が戻ってきた。
「彼女に何があった?」
クレアは僕の向かいの椅子を引いた。
「座ってもいい?」
僕は頷いた。
彼女は腰を下ろした。
「その夏の終わり頃、母がノラを専門治療のために町の外へ連れて行ったの。数週間で戻ってくると思ってた」
僕の指が、テーブルの表面に刻まれた傷をなぞった。
「それで?」
「状態が悪くなった」
僕の親指が傷の上で止まった。
クレアは静かに続けた。
「その冬、亡くなったの」
僕は本棚のほうを見つめた。
どこか後ろで、子どもの笑い声がした。
僕たちはしばらく何も話さなかった。
やがて僕が尋ねた。
「誰も僕に教えてくれなかったの?」
「ええ」
「でも、僕が存在してることは知ってた」
「知ってた」
「僕がTinderにいるのを見たとき、僕だと分かった」
「そう」
「じゃあ、どうして?」
クレアは自分の手を見下ろした。
「やっと、あなたに伝える機会を与えられたんだと思ったから」
僕は待った。
「何年もの間、あなたの苗字すら知らなかったの」と彼女は続けた。「知っていたのは、イーサンという名前。あなたのお母さんが赤い車で迎えに来ていたこと。ノラが病気になった後、あなたたちが引っ越したこと。私が本気であなたを探そうと思った頃には、手がかりなんてほとんど残ってなかった」
「でも、最終的には見つけた」
「17年後、あなたの顔が私のスマートフォンに現れた」
僕は両手をジーンズに擦りつけた。
「それで、右にスワイプした」
「ええ」
「ノラが亡くなったって伝えるため。それが全部?」
「コーヒーを一杯。自分が誰なのかを伝える。何があったのかを話す。ノラの友達でいてくれたことにお礼を言う」
僕は彼女を見た。
「それから?」
クレアは疲れたように小さく笑った。
「それから、あなたがもう一杯コーヒーを注文した。店員が私たちの周りで椅子を片づけ始めるまで、あなたは帰らなかった」
「それじゃ、どうして嘘をついたのかの答えになってない」
「ええ」
よかった。
少なくとも、彼女はそれで説明できたふりをしなかった。
僕は椅子にもたれた。
「もしノラが存在していなかったら、僕に右スワイプした?」
クレアは数秒間、黙って僕を見つめた。
「分からない」
その答えは、もっと優しい答えよりも痛かった。
彼女は僕が返事をする前に続けた。
「たぶん、あなたのプロフィールを、そこまで長く見ることもなかったと思う」
僕は顔を背けた。
「でも、ノラが私をあのコーヒーショップまで連れて行ってくれたの」と彼女は認めた。「でも、あなたにもう一杯注文させたのはノラじゃない。椅子を片づけられるまで、あなたを帰らせなかったのもノラじゃない」
僕は立ち上がった。
「その後に起きたことが、その前に起きたことを消してくれるわけじゃない」
「分かってる」
「またそれだ」
「ごめん」
僕は写真を拾った。
「ずっと僕が何を知っていいのか、君が決めてた」
クレアは自分を弁護しようとしなかった。
しばらくして、彼女は言った。
「ええ」
「どうして?」
「最初は、あなたにノラを利用して近づいたと思われたくなかったから」
「ノラを利用して僕に近づいたんだろ」
「あなたに会うために。ええ」
「それから?」
クレアは灰色のカーペットを見つめた。
「その後は、あなたが離れていくのが怖くなった」
その夜、彼女が初めてくれた答えだった。
何か崇高な理由に包まれていない、ただの本当の答え。
僕は写真を一度折った。
すぐに後悔して、また開いた。
「少し、一人になる時間が必要だ」
クレアが立ち上がった。
「帰ったほうがいい?」
僕は考えた。
そして首を横に振った。
「ここにいて」
彼女は頷いた。
僕は一人で外へ出た。
そして、珍しくクレアは僕の後を追ってこなかった。
でも、図書館の中庭を半分ほど歩いたところで、別の記憶がよみがえった。
ノラが本をバタンと閉じる。
僕は怒っている。
そして、自分の子どもの頃の声。
「分かった。じゃあ、自分で最後まで読めよ」
僕は立ち止まった。
突然、知りたくなった。
それが、僕が彼女に最後に言った言葉だったのか。
僕はクレアにメッセージを送った。
「外に出てきてくれる?」
1分ほどで彼女が現れた。
でも、僕から数メートル離れたところで止まった。
「思い出した」
僕が言った。
クレアは待った。
「ノラに『じゃあ、自分で最後まで読め』って言った。あれが、僕が最後に彼女に会ったとき?」
クレアはゆっくり首を横に振った。
「あなたたちの最後の会話が何だったのか、正確には分からない」
不思議なことに、その答えは、偽りの確信よりもずっと心に響いた。
「でも、あの後も彼女はあなたのことを話してた」
クレアが付け加えた。
「何て?」
「だいたい、あなたは迷惑な子だったって」
僕は笑った。
するとクレアも微笑んだ。
「でも、あなたはいつも、彼女が読むのに遅れると待ってくれたって言ってた」
僕は写真を見下ろした。

何年もの間、ノラは僕の心のどこかにあった。
自分でも、その空白が存在していることを忘れていたほどの、失われた一部分。
今、その空白が少しずつ一人の人間になっていく。
黄色い眼鏡。
ゲームでズルをする。
ページを飛ばして読む。
僕に怒る。
僕はクレアを見た。
「君が僕を愛してることは信じる。でも、何を信じていいのかは、まだ分からない」
彼女はその場から動かなかった。
「分かってる」
「いや、君には分からない。僕自身にも分からない」
クレアは頷いた。
「私にどうしてほしい?」
その質問に、僕は少し驚いた。
「今夜は? ノラのことを話して」
「その後は?」
「家に帰りたい」
「分かった」
僕たちは、そのあともう一時間ほど話した。
ドラマチックなことなんて何もなかった。
ノラはレーズンが嫌いだった。
16歳になったらバイクが欲しいと言っていた。
ボードゲームのルールは「提案みたいなもの」だと本気で信じていた。
やがてクレアのアパートに戻ると、緑のドレスは椅子の上にきれいに畳まれていた。
「返品する?」
彼女が尋ねた。
「しない」
クレアが僕を見た。
「君が欲しがってたから買ったんだ」と僕は言った。「そこは変わってない」
そして、僕は家に帰った。
4日後、僕は一人で図書館へ戻り、かつてノラと僕が言い争った本を借りた。
結末はひどかった。
僕はクレアにメッセージを送った。
「ノラが正しかった。結末、最悪だ」
ほとんどすぐに返信が来た。
「彼女、正しいときは本当に手に負えなかったわ」
僕は笑った。
「まだ図書館にいる。もし来たいなら、一緒に結末について言い争おう」
20分後、クレアがやってきた。
僕たちは同じ小さな子ども用テーブルに並んで座った。
僕が本を読んでいると、彼女の手が無意識にページへ伸びた。
僕は指を一本置いた。
「ちょっと。まだ読み終わってない」
彼女の手が止まった。
「ごめん」
彼女は手を引っ込めた。
そして、待った。
僕はその段落を読み終えた。
それから、自分の手でページをめくった。
