義母は「病気の赤ちゃんの世話は母親の仕事」と言った。でも、私が次にしたことに、義母は完全に言葉を失った。

私たちの娘の名前はジューン。

9月のある火曜日、彼女はこの世に生まれてきた。体重は約3,290グラム。鼻はイーサンそっくりで、そして生まれた瞬間から、自分が何を感じているのかを世界中に知らせる強い意志を持っていた。

お腹が空けば、前触れなんてなかった。

「今すぐお腹が空いた」と言わんばかりに泣く。

眠くなれば、ほんの数秒で全身が疲れ切ってしまう。

そして幸せなときは、顔いっぱいに、赤ちゃんだけが見せられる純粋で無邪気な喜びを浮かべた。

ジューンが生後4か月になった夜。

彼女の体温は40度を超えた。

その夜、救急外来の待合室で何が起きたのかを話す前に――まず、あの夜までの私はどんな人間だったのかを知ってほしい。

私の名前はレイチェル・ドネリー。

ジューンが生まれたとき、私は31歳だった。

私はナースプラクティショナーとして働いていて、その時点ですでに6年間、救急医療の現場にいた。

仕事を通して、私は周囲の人間が恐怖で取り乱しているときでも、冷静に動くことを身につけていた。

救急外来で何かが起きたとき、誰かが状況を正確に聞き取らなければならない。

数字を理解しなければならない。

何が今すぐ重要で、何が後回しにできるのかを判断しなければならない。

そして恐怖で何も頭に入らなくなっている家族に、状況を説明する人間も必要だ。

その役目を担うのは、たいてい私だった。

救急医療の世界では、パニックは後回しにしていいと学ぶ。

後になって、一人きりで車の中で震えてもいい。

駐車場で泣いてもいい。

夜明けまで、その日の勤務を何度も思い返してもいい。

でも、その場では冷静でいる。

まずは冷静さ。

いつだって、それが最優先だった。

私は母からも、別の意味で「耐える」ということを教わっていた。

ジューンが生まれる2年前。

母は58歳で、若年性パーキンソン病と診断された。

私は26歳だった。

母はその診断にも、人生のほとんどすべてのことと同じように向き合った。

尊厳を失わず、頑固で、そして誰かに同情されることをほとんど望まなかった。

父が家を出たあと、母は3人の子どもを一人で育てた。

母の人生哲学は、いつもシンプルだった。

「やらなければならないことがあって、自分にできるのなら、やるの」

都合がよくなってからでもない。

誰かが感謝してくれると約束してからでもない。

必要なことを見つけたら。

その瞬間に行動する。

母が病気になってから、私は薬の管理をし、通院の予定を調整し、週に2回母の家へ車を走らせ、毎週日曜日の午後を一緒に過ごした。

本の話をした。

庭の話をした。

近所の人たちの話もした。

母は通りに住む人全員について細かい意見を持っていて、自分の体が思うように動かなくなってきたからといって、その意見まで失うつもりはまったくなかった。

私は母の世話をすることを、特別なことだとは思わなかった。

必要だった。

そして私には、それができた。

それから、イーサンがいた。

イーサン・ドネリーは、私たちが結婚したとき33歳だった。

彼はソフトウェアアーキテクトだった。

頭がよくて、面白くて、思いやりがあって、そして心から優しい人だった。

だから最初の頃、彼を愛するのはとても簡単だった。

私が大変な勤務を終えて帰宅すると、彼はすぐに気づいた。

夕食が用意されていることもあった。

何気なく「これ欲しいな」と言ったものを、3週間後になっても覚えていて、突然プレゼントしてくれることもあった。

結婚1年目の彼は、私が「こんなパートナーがいてくれたら」と願っていた、そのままの人だった。

でも、彼にはシルヴィアという母親がいた。

そして、その事実は私たちの結婚生活の中に、壁の裏に入った小さな亀裂のように存在していた。

普段は見えない。

忘れてしまうことさえある。

けれど、その亀裂は確実に家の構造そのものに影響を与えていた。

シルヴィアは62歳。

イーサンの父ジェラルドとは35年間結婚していた。

ジェラルドは優しくて穏やかな人だった。

そして、シルヴィアが「こうなるべきだ」と決めたことに口を挟まず、ただそこにいることに関しては、恐ろしく長けていた。

シルヴィアは、ほとんどすべてのことに強い意見を持っていた。

でも、その中でも一番強かったのは、イーサンに関する意見だった。

彼は彼女の一人息子。

生まれた瞬間から、彼女の感情の世界の中心だった。

彼女が息子を深く愛していたことを、私は一度も疑ったことがない。

問題は、その愛情があまりにも一貫して彼を不快なことから守ってきたため、二人とも、それがどれほど彼の人格を形作っているのか理解していなかったことだった。

私は早い段階で、それに気づいていた。

最初の妊娠を流産したとき。

シルヴィアは1週間、毎日イーサンに電話をかけた。

私には一度も電話をかけてこなかった。

別の部屋から、彼女がイーサンに話している声が聞こえた。

「あなたにとって、どれだけつらいことか分かるわ」

「本当によく頑張っているわね」

「私に何ができるか言って」

妊娠していたのは私だった。

妊娠を失ったのも私の体だった。

それなのに、シルヴィアの心配は完全にイーサンへ向けられていた。

私は何も言わなかった。

そのときは、自分の結婚生活を守っているつもりだった。

私は仕事柄、悲しみというものを理解していた。

人は完璧には対応できない。

シルヴィアは、自分の息子以外の人にどう慰めの言葉をかければいいのか分からないだけなのだ。

そう自分に言い聞かせた。

だから、その問題とは戦わないことにした。

でも数年後、私はそれが間違いだったと理解することになる。

争いを避けたからといって、争いそのものが消えるわけではない。

ときには、問題を見えない場所に隠しておくことで、ただ成長する時間を与えてしまうだけなのだ。

そして、ジューンが生まれた。

約3,290グラム。

イーサンそっくりの鼻。

そして、病院のフロア全体を埋め尽くすほどの個性。

イーサンは、初めて彼女を腕に抱いたとき、泣いた。

本当に泣いた。

彼は彼女を見つめながら名前をささやいた。

まるで、その瞬間、世界には彼女以外何も存在しないかのように。

あの瞬間は本物だった。

後になっても、私はそのことを覚えていた。

最初の6週間、彼は私が思い描いていた通りの父親だった。

頼まなくてもおむつを替えた。

夜中にも起きた。

技術的な問題に取り組むときと同じくらい真剣な顔で、ジューンのおくるみの巻き方を覚えた。

ちゃんとできる父親になりたかったのだ。

そして、実際にそうだった。

でも、生後7週目頃。

彼の会社が大規模な新製品のローンチを迎えた。

勤務時間は長くなった。

帰宅すると疲れ果てていた。

私は理解していた。

私だって、何年も無理難題のような勤務を終え、何も残っていない状態で帰宅してきたのだから。

でも、少しずつ私たちの違いが明らかになっていった。

私が疲れ果てて帰宅しても、ジューンには授乳が必要だった。

洗濯物もある。

母の薬も整理しなければならない。

私に体力が残っているかどうかに関係なく、生活は続いていく。

一方、イーサンが疲れ切って帰宅すると、その日の責任を果たしたかのように振る舞うことが多かった。

私が「私も疲れている」と伝えると、彼は聞いてくれた。

でも、私の疲労が彼の行動を変えることは、ほとんどなかった。

まるで雨が降っていると聞かされたときのようだった。

屋根の下にいるから、濡れない。

雨が降っていることは知っている。

ただ、自分が濡れるわけではない。

私は、イーサンが意図的に冷酷だったとは思っていない。

ただ彼は33年間、「自分の疲れが最優先される」ことを学び続けてきた。

誰かに直接そう教えられたわけではない。

シルヴィアが行動で教えていたのだ。

何かが難しくなるたび、彼女はそれを簡単にした。

イーサンが不快になるたび、彼女は飛んできて助けた。

人生が「不便に耐える」という教訓を与えようとするたび、シルヴィアはその教訓が訪れる前に、不便そのものを取り除いてしまうことが多かった。

そして、ジューンが病気になった。

熱が出たのは木曜日だった。

最初は37.7度。

小児科医からは、様子を見て、38.3度を超えたら連絡するよう言われた。

その日の午後6時には38.6度になった。

私は電話をした。

「タイレノールを飲ませてください」

「様子を見てください」

「39度になったら、また連絡してください」

その夜10時。

体温計は39.1度を示していた。

もう一度タイレノールを飲ませた。

そして、また見守った。

午前1時。

ジューンの体温は40.1度になった。

私は再び小児科医に電話した。

今度は、医師は一瞬も迷わなかった。

「すぐに救急外来へ連れて行ってください」

私はイーサンを起こした。

「ジューンの熱が40度を超えた。病院に行かなきゃ」

彼はほとんど目を開けていなかった。

それでも起き上がった。

私たちは着替えた。

イーサンが運転した。

そして午前2時頃。

私たちは、生後4か月の娘を腕に抱え、救急外来の待合室に座っていた。

彼女の泣き声は、いつもの空腹の泣き方ではなかった。

眠いときの泣き方でもなかった。

体のどこかがおかしくて、それがなぜなのか理解する術を持たない赤ちゃんの泣き声だった。

私は彼女を抱いて揺らした。

優しくあやした。

生後数週間の頃に私が作った、歌詞のない低いメロディーを歌った。

イーサンは歩き回っていた。

しばらくすると、彼は時計を見た。

「こんなの、おかしいだろ」

私は顔を上げた。

「何が?」

「9時に大事なプレゼンがある」

「まだ熱が高い。待たなきゃ」

「僕はもう限界なんだ、レイチェル」

その言葉は鋭かった。

そして彼はスマートフォンを取り出し、離れていった。

私は仕事に連絡しているのだと思った。

私はジューンを抱き続けた。

20分ほどして、自動ドアが開いた。

救急外来にシルヴィアが入ってきた。

コートを着ていた。

彼女の家からここまでは40分かかる。

午前2時に、車で40分もかけて来たのだ。

でも、ジューンのためではなかった。

イーサンのためだった。

彼女は私の横をまっすぐ通り過ぎた。

椅子に置かれていたイーサンのコートを拾い、彼に押しつけた。

「行きましょう」

私は彼女を見つめた。

「何をしているんですか?」

「イーサンを私の家に連れて帰るの。プレゼンの前に、昔の自分の部屋で少し眠らせるわ」

一瞬、本気で自分が聞き間違えたのだと思った。

「私たちはジューンが診てもらうのを待っているんです」

シルヴィアは、それが当然だけれど関係ないことだと言わんばかりに私を見た。

「彼は疲れているの。こんなところで一晩中座っているなんて無理よ」

「私も疲れています」

彼女の表情が険しくなった。

「あなたは母親でしょう」

そして、救急外来の待合室で。

シルヴィアは、何年もの間、態度で伝えてきたことを初めて声に出した。

「イーサンは、こんなに大きなストレスを背負うために父親になったんじゃないわ。あなたが母親なんだから、あなたが何とかしなさい」

その瞬間、部屋が静まり返った。

普通の静けさではない。

公共の場所で突然、誰もが「今、自分たちは誰かのプライベートな問題を目撃している」と気づいたときに訪れる、あの気まずい沈黙だった。

私はシルヴィアを見た。

それからイーサンを見た。

彼はコートを手に持っていた。

そして、待っていた。

その瞬間、すべてがはっきりした。

イーサンは「待つ」ことを学んでいたのだ。

誰かが決めてくれるのを待つ。

誰かが処理してくれるのを待つ。

不快なことが消えるのを待つ。

十分に待てば、誰か――たいてい女性――が最終的に責任を引き受けてくれる。

シルヴィアは、その教えを続けるためにやって来たのだ。

私は立ち上がった。

ジューンを胸元に抱き直した。

そして夫をまっすぐ見た。

「イーサン」

「レイチェル」

「よく聞いて」

「分かった。お母さんのことは……」

「あなたのお母さんの話じゃない」

彼は黙った。

「ジューンは40度を超える熱がある」

「分かってる」

「まだ生後4か月よ」

「分かってる」

「なぜ私たちがここにいるのか、分かってる?」

「医者を待ってるんだろ」

「違う」

私は声を落ち着かせた。

「私たちは、生後4か月の娘が危険なほど高い熱を出しているからここにいるの。感染症がないか調べて、合併症の危険がないか確認するためよ」

彼は私を見た。

「レイチェル……」

「これは、両親が一緒に向き合うべき医療上の緊急事態なの」

「でも……」

「私一人では無理だから言ってるんじゃない」

彼は何も言わなかった。

「私一人でもできる」

私はジューンを見下ろした。

「でも、この子には両親が必要なの」

そして、もう一度彼を見た。

「あなたは分娩室で彼女を抱いて、ずっとそばにいるって約束したでしょう」

「僕はここにいる」

「救急外来からお母さんに電話して、迎えに来てくれって頼んだじゃない」

沈黙。

「いつ電話したの?」

「離れたとき」

「つまり、娘が40度を超える熱で泣いている間、あなたは疲れたからって、お母さんに助けを求めたのね」

「9時にプレゼンがあるんだ」

「分かってる」

私はジューンを少し抱き直した。

「でも、ジューンはあなたのプレゼンのことなんて知らない」

彼は娘を見下ろした。

その頃には、ジューンも泣き疲れていた。

激しい泣き声は、小さく、弱々しい泣き声へと変わっていた。

なぜか、その声のほうが私にはつらかった。

私はシルヴィアのほうを向いた。

彼女はまだイーサンの横に立ち、当然のように彼が自分と一緒に出ていくと思っていた。

「シルヴィア」

「何?」

「座ってください」

彼女の目が大きくなった。

「何ですって?」

「座るか、家に帰ってください」

彼女はイーサンを見た。

「イーサン?」

彼は答えなかった。

私を見た。

それからジューンを見た。

そして座った。

シルヴィアはしばらく立ったままだった。

やがて、彼女も座った。

私は立ったままだった。

「これから、こうします」

二人とも何も言わなかった。

「医師を待ちます」

私はイーサンを見た。

「あなたも残る」

彼は小さくうなずいた。

「医師がジューンを診るときは、一緒に診察室へ入る」

返事はなかった。

「もし入院することになったら、その手続きにも立ち会う」

私は続けた。

「退院できることになったら、指示を一緒に聞く」

彼を見た。

「あなたのプレゼンが明日になるか、なくなるかは、あなたと会社の問題よ」

それから娘を見た。

「ジューンは40度を超える熱を出している。今夜の最優先事項は、それだけ」

シルヴィアが口を挟もうとした。

「レイチェル――」

「まだ終わってません」

初めて、彼女は黙った。

「あなたがイーサンを愛していることは分かっています」

彼女の表情が変わった。

「それを疑ったことは一度もありません」

そして、私は3年間避けてきた言葉を口にした。

「でも、あなたの愛し方が、彼をどんな人間のままにしてしまったのか、私はずっと見てきました」

「どういう意味?」

「何かが大変になるたびに、あなたが助けに入ったということです」

彼女は私を見つめた。

「彼が不快になると、あなたがその不快感を取り除いた」

「誰かのニーズも自分と同じくらい大切だと学ぶ必要があるときには、彼のニーズが最優先だと教えた」

彼女の顔が強張った。

「そして今夜、あなたは午前2時に40分も車を運転して、疲れたという理由で、33歳の男性を病気の生後4か月の娘から連れ出そうとした」

「助けようとしただけよ」

「あなたは救急外来で私に怒鳴って、『息子はこんなことに耐えるために父親になったんじゃない』と言った」

「その通りよ」

「でも、彼は父親になったんです」

「それは別の話――」

「自分の赤ちゃんが危険な熱を出しているとき、午前2時の救急外来に座ることを避ける父親なんて存在しません」

「彼には責任があるのよ」

「ええ」

私はジューンを見た。

「この子も、その一つです」

「あなたなら一人でできるでしょう」

「ええ」

私はうなずいた。

「できます」

その答えに、彼女は驚いたようだった。

「私はできる」

声を落とした。

「この4か月、ほとんど全部、一人でやってきたから」

シルヴィアはイーサンを見た。

「私は彼に残ってほしいと言っているんじゃない。私一人では何もできないからじゃない」

そして夫を見た。

「一緒に結婚生活を築いた人に、つらいことが起きたとき、私の隣に立っていてほしいだけ」

シルヴィアは息子のほうを向いた。

「イーサン」

彼はようやく母親を見た。

何かが、彼の顔の中で変わっていた。

罪悪感。

戸惑い。

そして気づき。

何十年も信じて生きてきたことが、本当ではなかったのかもしれないと知った人間の顔だった。

「お母さん」

「こんなふうに私に話させないで」

「お母さん」

「あなたのために40分もかけて来たのよ」

「分かってる」

彼は息を吸った。

「僕は電話するべきじゃなかった」

「あなたは助けが必要だったのよ」

「違う」

彼の声は静かだった。

「僕はここに残るべきだった」

シルヴィアが固まった。

彼は続けた。

「レイチェルが正しい」

「イーサン」

「母さん。レイチェルが正しい」

彼は床を見つめた。

「僕は疲れていたから、ここにいたくなくて、母さんに電話した」

そしてジューンを見た。

「助けが必要だったからじゃない」

彼は唾を飲み込んだ。

「逃げたかったんだ。つらいことから」

シルヴィアが首を横に振った。

「彼女に言わされているのよ」

「違う」

彼は私を見た。

そして母親へ視線を戻した。

「何か月も、ずっと同じことをしてた」

声に少し力が戻った。

「仕事とか疲れとかを理由にして、レイチェルにもっと背負わせてきた」

「彼女はできるでしょう」

「それが問題じゃない」

その言葉に、私たち3人が驚いた。

彼は続けた。

「彼女が全部やっているのを見てきた」

「ジューン」

「仕事」

「お母さんのこと」

「全部」

「そして僕は、疲れているからって逃げていた」

シルヴィアは傷ついた顔をした。

「私はあなたを助けたかっただけ」

「分かってる」

彼はうなずいた。

「母さんはずっと僕を助けてくれた」

少し間を置いてから、彼は言った。

「でも、その助けがあったから、僕はつらいときにそこに留まることを学べなかったんだと思う」

シルヴィアは何も言わなかった。

「それを学ばなきゃいけない」

彼はジューンを見た。

「嫌でも、その場に残る方法を」

声が少し震えた。

「それが親になるってことだから」

彼は母親を見た。

「自分の赤ちゃんが病気で、それが面倒だからって、救急外来から母親に電話して逃げる33歳の男にはなりたくない」

シルヴィアは呆然としていた。

「あなたは私に何をしてほしいの?」

「家に帰って」

彼女の顔が変わった。

「イーサン……」

「お願いだから」

そして彼は付け加えた。

「愛してる」

声が柔らかくなった。

「でも、僕はここに残らなきゃいけない。自分の家族と一緒に」

シルヴィアは私を見た。

私は何も言わなかった。

言う必要もなかった。

彼女はゆっくり立ち上がった。

バッグを手に取った。

「明日、電話するわ」

「分かった」

彼女は自動ドアへ向かった。

そして、そこで立ち止まった。

振り返った。

「レイチェル」

「はい?」

彼女の声は、今まで聞いたことがないほど小さかった。

「ごめんなさい」

私は彼女を見た。

「ありがとうございます」

そして彼女は出ていった。

待合室は少しずつ元の空気を取り戻していった。

人々は再びスマートフォンに目を戻した。

看護師たちは書類作業に戻った。

部屋は、また何事もなかったかのように日常へ戻った。

イーサンは私の隣に座った。

ジューンの背中に、そっと手を置いた。

「大丈夫だよ」

彼はささやいた。

「パパがここにいるから」

ジューンが目を開け、彼の顔を見た。

そして、少し落ち着いた。

イーサンは私を見た。

「ごめん」

「うん」

「母さんに電話したこと」

「うん」

「それと、今夜までの全部」

「うん」

「ごめんだけじゃ足りないって分かってる」

「そうね」

「でも、本気でそう思ってる」

「分かってる」

彼は唾を飲み込んだ。

「僕に何をしてほしい?」

「残って」

「残る」

「今夜だけじゃない」

彼は私の目を見た。

「分かってる」

「あなたが必要な夜は、全部」

「うん」

私は息を吸った。

「この4か月、私はほとんど一人でやってきた」

「分かってる」

「私は何でも対処できる」

「分かってる」

「でも、一人で全部背負うことに同意して結婚したわけじゃない」

「うん」

「あなたは何に同意して結婚したの?」

「パートナーになること」

彼はうなずいた。

「そうだね」

「それが、私が今でも望んでいるもの」

私は少し間を置いた。

「あなたに出ていけと言っているんじゃない」

「僕もドラマなんて望んでない」

「私は、私のパートナーに、本当に家族のために動いてほしいだけ」

「そうする」

「今夜から始めて」

「もう始めてる」

午前3時47分。

ついにジューンの名前が呼ばれた。

私たちは一緒に診察室へ入った。

小児科の研修医は、オーエンズ医師と名乗った。

彼女はジューンを丁寧に診察した。

そして、ジューンは尿路感染症だと説明した。

乳児の女の子には、それほど珍しいことではないという。

尿培養検査を行う。

抗菌薬を始める。

熱を注意深く観察する。

医師は薬の投与スケジュールを説明した。

どんな症状に注意するべきなのか。

いつ小児科医に連絡するのか。

いつ再び救急外来へ戻るべきなのか。

イーサンは聞いていた。

本当に聞いていた。

質問もした。

しかも、ちゃんとした質問だった。

「聞いています」とアピールするための質問ではない。

本当に何をすべきなのか理解したい人間の質問だった。

私たちが病院を出たのは午前5時15分頃。

ジューンは最初の抗菌薬を受けていた。

熱は38.5度まで下がっていた。

まだ病気ではあった。

でも、少し落ち着いていた。

私は後部座席で彼女の隣に座った。

イーサンが運転した。

ゆっくりと。

慎重に。

家に着くと、私はジューンに授乳した。

いつもより少ししか飲まなかった。

そして、私の胸の上で眠った。

イーサンは近くに座っていた。

「僕が抱こうか?」

「もう少ししたら」

「分かった」

そして彼は言った。

「仕事、休む」

私は彼を見た。

「プレゼンは?」

「家族に緊急事態が起きたって伝える」

「そこまでしなくても……」

「するよ」

彼はジューンを見た。

「するべきだから」

「あなたも寝なきゃ」

「君もだろ」

「今日はジューンを見ていないと」

彼は手を差し出した。

「僕もいる」

私は彼を見つめた。

そして、うなずいた。

「分かった」

午前8時。

彼は上司に電話した。

事情を説明した。

上司はプレゼンを延期できると言った。

それだけだった。

何も起きなかった。

人生を左右するような大惨事でもなかった。

キャリアが終わるわけでもなかった。

ただ上司が、

「家族を優先して」

そう言っただけだった。

イーサンはリビングに戻ってきた。

「延期になった」

それから腕を差し出した。

「レイチェル」

私はジューンを彼に渡した。

彼は娘を胸に抱いた。

「寝ておいで」

私は眠った。

4時間。

目を覚ますと、イーサンはソファに座っていた。

ジューンは隣のベビーベッドで眠っていた。

テレビはついていなかった。

スマートフォンも見ていなかった。

ただ、娘を見ていた。

私が入ってくると、彼は顔を上げた。

「体温は37.9度」

「2時間前に測った」

「9時に次の抗菌薬を飲ませた」

「少し食べたよ」

「そんなに多くはない」

「でも、少しはね」

「1時間くらい前に寝た」

私は彼の隣に座った。

ジューンは少し穏やかな顔をしていた。

「良くなってきたみたい」

「僕もそう思う」

そしてイーサンは黙った。

「レイチェル?」

「何?」

「君のお母さんのこと、手伝いたい」

私は彼のほうを向いた。

「私の母?」

「週に2回、君が車で会いに行ってるだろ」

「そうね」

「僕は今まで、ほとんど何もしてこなかった」

私は黙って待った。

「君が働いて、ジューンの世話をして、お母さんの世話までしてるのを見てた」

彼は首を振った。

「それって、ほとんど3つのフルタイムの仕事だよ」

「あなたも仕事をしてる」

「分かってる」

「でも、負担の割合が違う」

私は思わず少し笑った。

「そうね」

「本当に役に立ちたい」

「役に立っているように見せるんじゃなくて?」

「役に立つ」

「それってどういう意味?」

彼はすでに考えていたらしい。

「木曜日の通院は僕が送迎する」

「水曜日の朝もあなたが担当」

「日曜日の午後も僕がやる」

「それから夜のジューンの世話は、二人で分担する」

彼は少し間を置いた。

「本当に半分ずつ」

私はうなずいた。

「それが分担するってこと」

「前にも何度も言ったのに、結局やらなかった」

「そうね」

彼は顔をしかめた。

「分かってる」

そしてうなずいた。

「僕がやめたときは、ちゃんと指摘してほしい」

「今までもしてきた」

彼は痛そうな顔をした。

「分かってる」

それから、小さく笑った。

「君が無理に僕の目を覚まさせるところまで行く前に、ちゃんと聞くことから始めないとな」

「それなら助かる」

彼は小さく笑った。

でも、すぐに真剣な表情へ戻った。

「母さんとも話さないと」

「そうね」

「僕自身がやる」

「そうして」

「母さんと向き合うのが嫌で、僕は母さんが僕たちの結婚生活の問題になるのを放置してた」

私は彼を見た。

「僕は、君の現実より自分の居心地の良さを優先してた」

彼は少し間を置いた。

「ずっと、そうしてたんだと思う」

彼が、

「悪気はないんだ」

と言うたび。

シルヴィアが何かを言っても見て見ぬふりをしたとき。

「もう放っておこう」と私に言ったとき。

不快な会話を避けるほうが楽だからと、何度も問題から逃げたとき。

彼はずっと、自分の居心地の良さを選んでいた。

「あとで母さんに電話する」

「ジューンの次の検温が終わってから」

「分かった」

そして彼は、私が予想もしなかったことを聞いた。

「どうして僕を帰らせなかったの?」

私は彼を見た。

「何?」

「今夜」

「あなたなら病院で一人でも何とかできた」

「妹に電話することもできた」

「他の誰かに頼むこともできた」

「君には僕が必要なかった」

「それなのに、どうして僕を残したの?」

私は少し考えた。

「あなたに、残る人になってほしかったから」

彼は私を見た。

「ただの父親じゃなくて?」

「あなたに」

「どうして?」

私はジューンを見た。

「あなたは彼女が生まれたとき、そこにいた」

「彼女を抱いた」

「泣いた」

「あのときのあなたは本物だった」

彼はうなずいた。

「私は、その人と結婚したの」

「ジューンにも、そのあなたが必要なの」

「美しい瞬間だけじゃなくて」

「昨夜みたいな夜にも」

「その人になりたい」

「分かってる」

「どうして分かるの?」

「あなたが残ったから」

「君が僕を無理やり残した」

「そうね」

「でも、母さんもいた」

「それでも出ていくことはできた」

彼は下を向いた。

「でも、途中から出ていきたいと思わなくなった」

「待合室で、君があんなことを言ったとき……」

彼は首を振った。

「もう言い訳はいらないと思った」

「理由がなくても残れる人間になりたかった」

「それが、私があなたに望んでいること」

「分かってる」

ジューンが身じろぎした。

考えるより先に、イーサンはベビーベッドへ手を伸ばし、娘のそばにそっと手を置いた。

ジューンは落ち着いた。

私は彼を見ていた。

彼は私を見ていなかった。

娘を見つめていた。

「可愛いな」

「そうね」

「僕、もっと言わないとな」

彼は私を見る。

「この子のこと」

そして、

「君のことも」

「一つずつでいい」

私は言った。

彼は笑った。

「まずは、残ること」

「そう」

「それから母さんと話す」

「そう」

「それから君のお母さんを手伝う」

「そう」

「そのあと、全部」

「全部」

彼はうなずいた。

「一歩ずつ」

朝の光が部屋いっぱいに広がっていった。

一晩中起きていたあとだからこそ、初めて気づくような光だった。

ジューンは静かに呼吸を続けていた。

抗菌薬も効き始めていた。

熱は少しずつ下がっていく。

翌朝には、37.8度を下回るだろう。

そして、もうすぐ彼女は元のジューンに戻る。

お腹が空けば、すぐに泣く。

眠くなれば、突然眠る。

幸せなら、顔いっぱいで笑う。

でも、まずはその朝だった。

静かな部屋。

ジューンのそばに置かれたイーサンの手。

何か大きなことを乗り越えた家に訪れる、不思議な静けさ。

「イーサン?」

「うん?」

「残ってくれて、ありがとう」

彼は私を見た。

「僕を残してくれて、ありがとう」

そして首を振った。

「本当にそう思ってる」

「僕には、誰かに残らせてもらう必要があったんだ」

彼はジューンを見た。

「もう、そんな必要のない人間になるよう努力する」

「分かってる」

「でも、ありがとう」

私はうなずいた。

「どういたしまして」

そして私たちは、朝の光に包まれながら、娘と一緒にそこに座っていた。

長い夜は終わった。

何か劇的なことが起きたわけではない。

それなのに――

なぜか、すべてが変わっていた。

この記事は気に入りましたか?友達と共有してください。
面白い話