義母は出会ったばかりの男と残った――5日後、真夜中に私へ電話をかけてきて、震える声でこう囁いた。「お願い、助けて……息子には言わないで」

第1部――かつてのヴァレリー

私がオーウェンと結婚していた8年間、彼の母親であるヴァレリーは、私たちの生活にいつも存在していた。

彼女はほぼ毎日のようにオーウェンに電話をかけてきた。

仕事のことを聞きたい日もあれば、腹を立てているいとこや近所の人、遠い親戚の愚痴をこぼす日もあった。

そして時には、蛇口から水がポタポタ漏れている写真や、曲がって取り付けられた戸棚の扉の写真をオーウェンに送り、

「私の一人息子は、いつになったら直しに来てくれるの?」

とメッセージを添えるのだった。

オーウェンは、電話が迷惑そうなふりをしていた。

でも、本当はそんなことはなかった。

ほとんど必ず電話に出ていた。

ヴァレリーには一人息子しかいなかった。

そして2年前、夫を亡くしてから、彼女とオーウェンの関係は、二人にもよく分からない形で変わっていった。

ヴァレリーは35年間、夫と暮らしていた。

オーウェンから聞いていた話では、両親は小さな日常の習慣を大切にする夫婦だった。

毎朝一緒にコーヒーを飲み、土曜日には二人で買い物へ行き、夜はテレビを見て、旅行は何か月も前から計画する。

そんな人生だった。

夫が亡くなったとき、ヴァレリーが失ったのは、ただ夫だけではなかった。

人生の大半を支えていた「中心」そのものを失ったのだ。

数か月間、彼女はほとんど外出しなかった。

友人が食事に誘っても、

「ごめんなさい」

と断った。

週末旅行に誘われても、

「また今度ね」

と答えた。

ある日、近所の女性が遠慮がちに、

「もう一度、誰かと付き合ってみるのもいいんじゃない?」

と勧めたことがあった。

ヴァレリーは悲しそうに微笑んだだけだった。

「私はもう、欲しかった人を手に入れていたの」

そう言ったという。

だからこそ、私とオーウェンは海辺のリゾートで一週間過ごす計画を立てたとき、ヴァレリーも誘った。

彼女を「立ち直らせよう」などと思っていたわけではない。

ただ、少しの間だけでも、静まり返った家から離れてほしかった。

最初の2日間は、予想していた通りだった。

ヴァレリーはプールサイドのパラソルの下で、ほとんど読んでいないような小説を手にして座っていた。

食事には私たちと一緒に来た。

必要なときには笑った。

でも、どこか心ここにあらずという感じが残っていた。

ところが、2日目の夜。

ヴァレリーはホテルのバーへ行った。

そこで、ラッセルと出会った。

私が彼に気づいたのは、ヴァレリーが笑っていたからだった。

夫を亡くしてから身につけた、あの小さく上品な笑い方ではない。

まったく違っていた。

彼女は顔を上げて声を上げて笑っていた。

目尻には笑いじわができていた。

その瞬間だけ、彼女は重荷から解放されたように見えた。

生き生きとしていた。

ラッセルは65歳。

離婚歴があり、成人した子どもが2人いた。

彼は一時的にそのホテルに滞在していて、その後は海岸の少し先にある借りたコテージで、1か月ほど過ごす予定だった。

その夜、私とオーウェンが部屋へ戻ったときも、ヴァレリーはまだラッセルと話していた。

そして翌朝。

ヴァレリーは口紅をつけて朝食会場に現れた。

オーウェンはコーヒーを落としそうになった。

「母さん……」

ヴァレリーは何事もなかったかのように席についた。

「何?」

「口紅つけてる」

彼女は眉をひそめた。

「私だって口紅くらいつけるわよ、オーウェン」

「朝8時に?」

私はテーブルの下でオーウェンの脚を蹴った。

ヴァレリーはそれに気づいた。

そして微笑んだ。

「ラッセルが、一緒に朝食を食べようって」

オーウェンは椅子に深くもたれた。

「ラッセル……」

「そうよ」

ヴァレリーは念を押すように言った。

「ラッセル」

私はコーヒーカップの陰に笑顔を隠した。

2年ぶりだった。

ヴァレリーが、何かに心からワクワクしているように見えたのは。

だから私は、素直に嬉しかった。

第2部――新しい人生のように感じた3日間

それから数日間、私たちはほとんどヴァレリーに会わなかった。

朝はラッセルと長い時間、海辺を歩いた。

昼食も一緒に食べた。

ある夜には、ラッセルが車で20分ほど離れたシーフードレストランへ彼女を連れて行った。

ヴァレリーが戻ってきたのは夜10時を過ぎてからだった。

まるで「時間を忘れる」という感覚を、久しぶりに思い出した人のように笑っていた。

オーウェンも、母親の変化には気づいていた。

ただ、母親を守ろうとする彼の性格は、幸せそうなヴァレリーを見ても静かにはならなかった。

4日目の夕方。

オーウェンはホテルのロビーで母親を待っていた。

ヴァレリーがドアから入ってくると、オーウェンは立ち上がった。

「母さん、ちょっと急ぎすぎじゃない?」

彼女の笑顔が消えた。

「私は63歳よ」

「年齢くらい知ってるよ」

「だったら、16歳の子どもに話すみたいな言い方はやめて」

「そんなつもりじゃない」

彼女の視線が、

『どう見てもそうでしょう』

と言っていた。

本当の言い争いが起きたのは、その後だった。

ラッセルのホテル滞在はもうすぐ終わる。

だが、彼が借りていたコテージは、さらに1か月利用できる予定だった。

そしてラッセルは、旅行が終わったあともヴァレリーに一緒に暮らさないかと誘った。

最初に聞いたとき、私は冗談だと思った。

違った。

帰国する前夜。

私たち3人はバルコニーに座っていた。

そこでヴァレリーが言った。

「航空券、変更したの」

オーウェンは母親を見つめた。

「その人と知り合ってまだ3日だよ」

「分かってるわ」

「それなのに、その人の家に行くの?」

「家じゃないわ。借りてるコテージよ」

「一緒に?」

「ええ」

「つまり、ほとんど知らない男と暮らすってこと?」

ヴァレリーの表情が硬くなった。

「違うわ、オーウェン。私は旅行を延長するだけ」

「ほとんど知らない人と?」

彼女はグラスをテーブルに置いた。

「自分がどんな言い方をしてるか、分かってる?」

「心配なんだよ」

「違う」

ヴァレリーは静かに言った。

「あなたは私の代わりに決めようとしてるの」

「母さん、こんなの母さんらしくないよ」

ヴァレリーは数秒間、黙って息子を見つめた。

そして静かに言った。

「もしかしたら、あなたはもう私のことを知らないのかもしれないわね」

オーウェンは黙り込んだ。

その言葉が彼を傷つけたのが分かった。

でも、その言葉には確かな真実があった。

ヴァレリーは立ち上がった。

「私はこの2年間、自宅とスーパーと、たまにあなたの家を行き来するだけだった」

「一人の人と出会って、もう一度笑えるようになった。たったそれだけで、みんな私が何も判断できなくなったみたいに扱うのね」

「そんなこと言ってない」

「言わなくても分かるわ」

彼女は私たちが止める間もなく、部屋の中へ戻っていった。

しばらくして、オーウェンが私を見た。

「絶対、悪い結果になる」

「そうかもしれない」

私が答えると、彼は眉を上げた。

「君も僕と同じ意見なの?」

「ヴァレリーが寂しいんだと思う」

「そうだろ?」

「でも、寂しいことと、何も判断できないことは同じじゃない」

オーウェンは両手で顔を覆った。

「本当に、母さんをここに残して帰るべきだと思う?」

「私は、私たちなら選ばないような選択をする権利も、彼女にはあると思う」

彼は納得していなかった。

それでも翌朝。

私とオーウェンは、ヴァレリーを残して帰国の飛行機に乗った。


第3部――真夜中の電話

最初の数日間は、すべて順調に見えた。

いや。

順調どころか、以前よりずっと良かった。

ヴァレリーは毎朝、オーウェンに電話をかけてきた。

夕焼けの写真。

夕食の写真。

妙な飾りつけがされたカクテル。

海辺のカフェ。

そんな写真を次々に送ってきた。

その中には、ラッセルが写っているものもあった。

見たところ、ごく普通の男性だった。

何より大切なのは、ヴァレリーが幸せそうだったことだ。

ところが、帰宅して4日目。

写真が突然、送られてこなくなった。

オーウェンはすぐに気づいた。

「今日はまだ何も送ってきてない」

「朝、電話してきたでしょう?」

「6分だけ」

私は彼を見つめた。

「時間を測ったの?」

「違う」

でも、その表情は完全に測っていた人の顔だった。

「オーウェン、少し自由にさせてあげて」

彼はしぶしぶ頷いた。

そして翌日の午前0時47分。

私の携帯電話が鳴った。

画面には「ヴァレリー」の名前。

隣ではオーウェンが眠っていた。

私は小声で電話に出た。

「ヴァレリー?」

沈黙。

聞こえてきたのは、かすかな呼吸音だけだった。

やがて彼女が言った。

「ナタリー?」

その声を聞いた瞬間、私はベッドの上で身体を起こした。

「いるよ」

「今、一人?」

私はオーウェンを見た。

「寝てる。どうしたの?」

再び沈黙。

そして、彼女が囁いた。

「ナタリー……私、ここから出るのを手伝ってほしい」

私は気づけばベッドを離れて立ち上がっていた。

「ラッセルは?」

「寝てる」

「何かされたの?」

「ううん」

「脅された?」

「違う」

「コテージに閉じ込められてるの?」

「違うわ」

私は歩くのを止めた。

「じゃあ、何があったの?」

彼女は震える息を吐いた。

「馬鹿みたいに聞こえると思うから、どう説明したらいいか分からない」

「今は全部説明しなくていい」

「彼が起きる前に、ここを出たいの。私が帰りたいって言うたびに、彼はずっと話し続けるの。そして最後には、私のほうが自分の判断を疑い始めるの」

その瞬間、すべてが変わった。

「身体的に止められたことはある?」

「ない」

「携帯や財布、お金を取り上げられた?」

「ない」

「じゃあ、何があなたをここに縛りつけてるの?」

数秒間、彼女は黙った。

そして小さな声で言った。

「私……間違えたんだと思う」

肩に入っていた力が少し抜けた。

「分かった」

「家に帰りたい」

「じゃあ、帰ろう」

彼女は少しためらった。

「お願い。オーウェンには言わないで」

私は目を閉じた。

「ヴァレリー……」

「お願い」

「もし危険な状況なら、その約束はできない」

「ラッセルが怖いわけじゃないの」

その一言が、何より多くを物語っていた。

彼女は怯えているわけではなかった。

恥ずかしかったのだ。

ここに残ったこと。

帰りたいと思ったこと。

そして、息子がどんな反応をするのか分かっていたこと。

私は声を柔らかくした。

「今どこにいるの?」

「バスルーム」

「安全に出られる?」

「ええ」

「必要なものだけ持って。人のいる場所へ行って。カフェでもホテルのロビーでもいい。住所をメッセージで送って」

「ナタリー……」

「私が行く」

彼女は静かに泣き始めた。

「私、なんて馬鹿なんだろう」

「馬鹿だったかどうか考えるのは後でいい」

私は言った。

「今は、とにかく安全な場所へ行って」

第4部――ラッセルとの間に本当に起きたこと

朝6時には、私は空港にいた。

オーウェンには短いメモだけ残した。

『ヴァレリーに私が必要みたい。何が起きているのか分かったら説明する』

着陸すると、もう一度メッセージを送った。

『ヴァレリーは無事。もっと分かったら電話する』

ヴァレリーは、ラッセルのコテージから3つ先の通りにある、小さな朝食レストランに座っていた。

隣にはスーツケース。

顔は疲れ切っていた。

目は赤く腫れていた。

でも、怯えてはいなかった。

その違いは重要だった。

私を見た瞬間、ヴァレリーは立ち上がり、私を強く抱きしめた。

そしてすぐに言った。

「ラッセルが悪いことをしたのかどうかさえ、私には分からないの」

私は彼女の向かいに座った。

「じゃあ、彼が何をしたかから始めなくていい。どうしてここを出ようと思ったのか、それを話して」

彼女はコーヒーカップを両手で包んだ。

「コテージで過ごした最初の日は、本当に素敵だった」

二人で夕食を作った。

海辺を歩いた。

ワインを開けた。

ラッセルは、

「こんなに笑ったのは何年ぶりだろう」

と言った。

ヴァレリーにとって、それは「人生はまだ終わっていない」という証拠のように感じられた。

でも翌日。

ラッセルはクリスマスの話を始めた。

クリスマスは彼の家で過ごすか。

それとも彼女の家がいいか。

ヴァレリーは、ただの空想話だと思った。

ところが、その後ラッセルは彼女を海岸沿いの住宅街へ車で連れて行った。

「この青い家を指さしてね」

ヴァレリーは言った。

「『来年は、僕たちもあんな家に住めたらいいね』みたいなことを言ったの」

私は身を乗り出した。

「僕たち?」

「私もそう聞き返したわ」

そのときは笑った。

でも、ラッセルは笑わなかった。

その後、二人で夕食を食べていると、店員が何気なく、

「ご旅行ですか?」

と尋ねた。

ラッセルは笑って、

「彼女はもう少し長く滞在するよう説得中なんですよ」

と答えた。

ヴァレリーはコーヒーを見つめた。

「知り合ってまだ1週間も経っていなかったの」

「何て言ったの?」

「何も」

「どうして?」

「店員も笑った。ラッセルも笑った。そこで反論したら、私のほうが変な人みたいに感じてしまったの」

翌朝。

ラッセルはヴァレリーに賃貸物件を見せ始めた。

2LDK。

3LDK。

オーシャンビュー。

街に近い家。

そして最後には、

「二人が別々の家を維持するのは、あまり意味がないよね」

と言い、

いつかヴァレリーが自宅を売ることまで提案した。

私は目を見開いた。

「家を売る話までしたの?」

「すぐにじゃないわ」

彼女は慌てて付け加えた。

「いつか、って。先のことを考えていただけだって」

「あなたは何を考えたの?」

「最初の飛行機で家に帰りたい、って」

その夜、ヴァレリーはラッセルに、

「残りの旅行期間はホテルに泊まりたい」

と伝えた。

ラッセルは怒鳴らなかった。

脅しもしなかった。

ドアを塞ぐこともしなかった。

ただ、彼女が言う理由の一つ一つに反論した。

なぜ良いものを壊すのか。

なぜ恐怖に支配されるのか。

自分がどれほど孤独だったと認めたか。

幸せになる資格があるのではないか。

「彼はずっと、私が怖いから逃げているんだって言ったの」

ヴァレリーは目の下を拭った。

「もし……本当に彼の言う通りだったら?」

私は彼女をまっすぐ見た。

「あなたは彼と一緒にいたい?」

「いいえ」

「じゃあ、それ以上の理由はいらないよ」

彼女は私を見つめた。

私はもう一度言った。

「自分の気持ちを変えてもいいの」

彼女の唇が震えた。

「オーウェンには電話できなかった」

「『だから言っただろ』って言われると思ったから?」

彼女は頷いた。

その瞬間、私は理解した。

ヴァレリーは危険な男から救ってほしくて私に電話したのではなかった。

ただ、自分がここから出ることを手伝ってくれる人が必要だったのだ。

そして、

「ここに残ったあなたは馬鹿だった」

と責めずにいてくれる人が。


第5部――「あなたは聞いてくれなかった。反論しただけ」

朝食を終えた私たちは、ヴァレリーの残りの荷物を取りにコテージへ戻った。

中へ入る前、私はオーウェンに住所を送った。

来てほしいとは言わなかった。

ただ、私たちがどこにいるのか知っておいてほしかった。

ドアを開けたのはラッセルだった。

私を見ると、彼の表情が変わった。

「ナタリー」

「こんにちは、ラッセル」

彼はすぐにヴァレリーを見た。

「どうしたんだ?」

「残りの荷物を取りに来たの」

彼の顎が強張った。

「オーウェンに頼まれたのか?」

「違う」

「彼はここにいることを知ってるのか?」

「今は知ってる」

私は答えた。

ラッセルは苛立ったようだった。

「みんな、ヴァレリーが自分で決められない人間みたいに扱うのは、どうしてなんだ?」

ヴァレリーは荷物を詰める手を止めた。

「誰もそんなことしてないわ」

ラッセルは彼女のほうを向いた。

「真夜中に義理の娘に電話したじゃないか」

「私の話を聞いてくれる人に電話したの」

「僕は聞いた」

「違う」

ヴァレリーは答えた。

「あなたは私の答えを変えようとした」

ラッセルの表情が変わった。

「理解しようとしただけだ」

「私はホテルに行きたいって言った」

「パニックになってたからだ」

ヴァレリーは完全に動きを止めた。

そして、何かが彼女の中で静かに決まったようだった。

「あなたは、私が望んでいることが気に入らなかったから、私がパニックになっていると決めつけたのね」

ラッセルは椅子に腰を下ろした。

私が到着してから初めて、彼は防御的な表情を見せなかった。

ただ、疲れた顔をしていた。

「僕の家は空っぽなんだ」

彼は静かに言った。

ヴァレリーの怒りが少し和らいだ。

ラッセルは続けた。

「離婚してから、子どもたちは遠くへ行った。家に帰っても誰もいない。そんなときに君と出会った」

ヴァレリーは彼の向かいに座った。

「ラッセル……」

「僕たちは、何かを見つけたと思った」

「見つけたわ」

「じゃあ、どうして帰るんだ?」

「素敵な数日間を過ごしたからって、1週間で人生全部を一緒に築くことになるわけじゃないでしょう」

ラッセルは床を見つめた。

長い沈黙の後、彼は頷いた。

「僕は急ぎすぎた」

ヴァレリーはため息をついた。

「私もね」

そして、二人が避けていた真実が、そこにあった。

ラッセルは「心が通じたこと」と「将来が決まったこと」を混同していた。

ヴァレリーは、胸が高鳴る1週間を過ごしたことで、自分が突然、何も恐れない新しい人間になったと思い込んでいた。

でも、それで二人が悪い人になるわけではない。

ただ、二人とも孤独な家から逃げようとしていただけだった。

ラッセルは立ち上がった。

もう何も言い争わなかった。

彼はヴァレリーのバッグを一つ持ち、玄関まで運んだ。

そして今度こそ、彼女が「帰る」と言ったとき、ラッセルはその決断を受け入れた。


第6部――オーウェンがやって来た

私たちがヴァレリーのスーツケースを車に積んでいると、レンタカーが一台止まった。

オーウェンが降りてきた。

ヴァレリーはうんざりしたように声を漏らした。

「もう、冗談でしょう……」

どうやら私のメッセージを受け取ったオーウェンは、最初に取れる飛行機に飛び乗ったらしい。

彼は急いでこちらへ歩いてきた。

「母さん、大丈夫?」

「大丈夫よ」

彼は私を見た。

「何があった?」

そして、玄関に立つラッセルに気づいた。

オーウェンの表情が険しくなった。

「やっぱり、こんなの最初から間違ってたんだ」

私は目を閉じた。

言ってほしくなかった言葉の中でも、最悪のものだった。

「やっぱりそうだ。だから言っただろ」

ヴァレリーはゆっくりと息子を振り返った。

「それよ」

彼女は言った。

「だから私はあなたに電話できなかったの」

オーウェンが固まった。

「どういう意味?」

「あなたは、ラッセルに失望したから私が恥ずかしがってると思ってるでしょう」

「違うの?」

「違うわ。今の私は、あなたに腹を立ててる」

「僕に?」

「そう」

オーウェンは本当に驚いていた。

ヴァレリーは一歩、息子に近づいた。

「お父さんが亡くなってから、あなたは私が何を決めるたびに口を出すようになった」

「心配なんだよ」

「食事をしたか聞く。どこへ行くのか聞く。電話にすぐ出なかったら友達にまで連絡する」

「母さんだからだよ」

「分かってる」

彼女の声が少し柔らかくなった。

「愛情からそうしてることも分かってる。でもね、オーウェン。あなたの心配が、いつも愛情に感じられるわけじゃないの」

彼は黙った。

「時々、監視されているみたいに感じるの」

その言葉が、彼の胸に深く刺さったのが分かった。

ヴァレリーは続けた。

「私がここに、帰りたいと思ってからも長く残っていた理由の一つは、家に帰ったらあなたが何と言うか分かっていたから」

「母さん……」

「私は一度くらい、あなたの許可を取らなくても、大胆な決断ができるって証明したかったの」

オーウェンの表情が変わった。

「母さんに、何もできないと思ってほしかったわけじゃない」

「分かってる」

彼女は息を吸った。

「でも、私はそう感じ始めていたの」

オーウェンは視線を落とした。

ヴァレリーは背後のコテージを見た。

「ここに来たことが、私にとって正しい選択じゃなかったのかもしれない。ラッセルと一緒に暮らそうとしたのも、早すぎたのかもしれない」

「でも、自分の考えを変えたからって、最初からあなたが私の代わりに決めるべきだったことにはならないの」

オーウェンは反論しなかった。

「私が帰るからって、あなたの勝ちじゃない」

ヴァレリーは続けた。

「私の負けでもない。私は何かを学んで、別の選択をした。それだけよ」

その瞬間。

オーウェンは初めて、母親を守ろうとするのをやめた。

ただ、母親を見つめた。

そして静かに尋ねた。

「これから、どうしたい?」

ヴァレリーは目を瞬かせた。

その質問に、少し驚いたようだった。

おそらく、その朝初めて誰かが、

「あなたはどうしたい?」

と聞いてくれたからだ。

しかも、最初から答えを決めつけずに。

「自分のホテルの部屋が欲しい」

オーウェンは頷いた。

反射的に携帯電話へ手を伸ばした。

しかし、途中で止めた。

「分かった。探すのを手伝ってほしかったら、言って」

ヴァレリーの表情が柔らかくなった。

「そうするわ」

ホテルは彼女自身で予約した。

第7部――本当の「前へ進む」ということ

その日の夜、オーウェンは帰国した。

私はヴァレリーに頼まれて、さらに2晩、一緒に過ごした。

その2日間、私たちはラッセルのことを分析したりはしなかった。

旅行を「最悪の出来事」として終わらせることもしなかった。

代わりに、海を眺めながら夕食を食べた。

裸足で砂浜を歩いた。

ヴァレリーは3人分はありそうな大きなデザートを注文し、そのほとんどを一人で食べた。

最後の朝。

私たちは朝食を食べながら向かい合って座っていた。

ヴァレリーは考え込むようにコーヒーをかき混ぜていた。

「私は、ラッセルと出会ったことが、ようやく前へ進み始めた証拠だと思ってた」

私は彼女を見た。

「今は?」

彼女は微笑んだ。

「今は、一人で大きなデザートを注文することだって、前へ進むことになるんだと思う」

私は笑った。

でも、彼女が言いたいことはよく分かった。

ヴァレリーは「もう一度始めること」に失敗したわけではなかった。

ただ、その始まり方が、彼女の想像とは違っていただけだった。

再婚相手を見つける必要はない。

何も恐れない人間になる必要もない。

以前、何も言えなかった自分を取り戻すために、何でも「はい」と答える必要もない。

時には、誰かと出会うことが前へ進むことになる。

時には、その人から離れることが前へ進むことになる。

そして時には、

「これが欲しいと思っていた。でも、もう欲しくない」

と認めることが前へ進むことになる。

そして何より。

一度決めたことを変えたからといって、そのときの勇気まで消えるわけではない。

数か月後。

ヴァレリーはまた旅行を予約した。

今度は一人だった。

オーウェンが空港まで車で送った。

私も一緒に行った。

ターミナルに到着すると、ヴァレリーは自分でトランクからスーツケースを下ろした。

緊急事態はなかった。

真夜中の電話もなかった。

逃げなければならない男もいなかった。

母親の選択が正しいかどうか決めようとする息子もいなかった。

行き先を決めたのは彼女自身。

ホテルを予約したのも彼女自身。

旅行の日程を決めたのも、すべて彼女自身だった。

オーウェンはしばらく母親を見つめた。

そして咳払いをした。

「ホテルの口コミ、最後にもう一度だけ確認しておこうか?」

ヴァレリーはゆっくりと息子を振り返った。

オーウェンはすぐに両手を上げた。

「……いや、何でもない。母さんは63歳だもんな」

ヴァレリーの顔に笑顔が広がった。

「見知らぬ人と一緒に夕食を食べるくらい、ちゃんとできるわよ」

オーウェンも笑った。

ヴァレリーは息子の頬にキスをした。

そしてスーツケースを手に取り、一人で空港の扉の向こうへ歩いていった。

私とオーウェンは、その姿が人混みの中へ消えていくのを見ていた。

どちらも追いかけなかった。

なぜなら、私たちはようやく一つのことを学んだから。

誰かを愛するということは、必ずしも、その人が間違いを犯さないように守ることではない。

時には、その人自身の選択を信じること。

そして、その人が別の選択をすると決めたときも、責めることなく、そばにいること。

それこそが、本当の意味で誰かを愛するということなのだ。

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